矢越歌舞伎 伝統絶やすまい 5年ぶり復活 10日披露、稽古に汗/青森・佐井村

春祭りの上演に向け、「絵本太閤記十段目」の稽古に励む芸能保存会の会員たち

 青森県佐井村の矢越地区に長く伝わる漁村歌舞伎「矢越の歌舞伎」が、10日に開かれる「矢越地区春祭り 芸能発表会」で5年ぶりに復活する。歌舞伎を伝承している矢越芸能保存会の会員は当日の上演に向け、稽古に精を出している。

 保存会は2月13日から稽古を開始。平日は仕事が終わった後、発表会で披露する演目「三番叟(さんばそう)」「都々逸」などの練習を重ねる。27日夜は30代の若手メンバーが、50~60代の先輩の伸びやかな身ぶり手ぶりを見て覚えたり過去の発表会のDVDを眺めたりして、体に振りを染み込ませていた。

 矢越の歌舞伎は、例年春祭りで上演されてきたが、新型コロナ禍となった2020年から昨年まで中止が続いた。今回の発表会で披露する歌舞伎「絵本太閤記十段目~夕顔棚の場~」は20年に披露するはずだった演目。本能寺の変の後、明智光秀と豊臣秀吉が対決する場面のほか、光秀の母・さつき、妻・操らが葛藤する模様も描かれている。

 自らも稽古に励む矢越地区会の七戸宗徳会長は「4年越しの思いを、多くの人に見届けてほしい。今回初めて地区の歌舞伎を見る子どもたちには伝統を感じてもらい、伝承につなげていきたい」と話した。

 発表会は矢越地区生活改善センターで、10日午後1時に開演。歌舞伎のほか、矢越若者会の神楽(平獅子)、はまなす子ども会の矢越鮪大謀網囃子(まぐろだいぼうあみばやし)といった地区の団体による出し物も予定されている。入場は無料。

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