介護福祉士女性 →「ホースセラピー」牧場の経営者に きっかけは長女の心のケア

馬と触れ合い、心を癒やす「ハッピーホースファーム」を経営する香山かつ子さん=岡山県和気町小坂

 馬と触れ合って心と体を癒やす「ホースセラピー」の牧場経営に、兵庫県赤穂市に住む香山かつ子さん(55)が挑戦している。かつて長女(29)がいじめにあって不登校となり、親子で乗馬を始めたのが馬との出会い。「誰もが笑顔になれる場所にしたい」と、岡山県和気町の里山にある牧場で11頭の馬を世話している。(小谷千穂) ### ■ふさぎこんでいた長女が…

 ホースセラピーは、馬に乗ることで筋力や柔軟性、平衡感覚などを鍛える運動面の効果があるほか、触れ合いの中で安心感や自信、協調性など精神的な効果も得られるとされる。障害者やお年寄りが社会復帰を目指す、リハビリテーションとしても使われている。

 香山さんが馬の魅力を知ったのは約20年前。長女が小学校でいじめを受けた末に精神科病院への入退院を繰り返し、発達障害との診断を受けた頃だった。長女に「ちょっとでも元気になってほしい」と乗馬クラブに2人で入会。大きな馬と穏やかに触れ合い、ふさぎこんでいた長女が喜ぶ姿を見て感動を覚えたという。

 自身も趣味で馬と触れ合うようになり、みんなを笑顔にするホースセラピーの仕事に魅力を感じた。赤穂市内で介護福祉士をしていたが、47歳で退職。和気町の牧場でボランティアをしつつ馬の世話や管理について勉強し、2017年から近くの土地で個人事業主として「ハッピーホースファーム」を始めた。 ### ■のびのび、常に放牧

 人を癒やす前に「馬が馬らしくいられる」ことを大切にしているという。馬は人間の3歳児に相当する知能といわれ、感情をよく観察しながら、なるべくストレスを与えないよう接する。香山さんに飼育経験はなかったため、知人に紹介されたトレーナー歴15年以上の女性から指導を受けながら、試行錯誤する。

 広さ約6500平方メートルのファームでは、常に放牧をしている。自由に駆け回ったり寝転んだり、馬同士で頭をぶつけ合って遊んだり。のびのび過ごす馬の姿が見られるのが特徴だ。

 馬6頭とポニー5頭、ヤギ3匹とウサギ2羽、イヌ1匹、アヒル4羽が暮らし、香山さんは泊まり込みで世話をする。利用者は、触れ合ったり場内や里山で乗馬をしたりできる。地元小学校への出張体験も実施し、昨年10月には赤穂西小学校でも催した。

 子ども連れやお年寄りらが出入りし、障害のある人、学校に行けない子どもらも頻繁に訪れて楽しむ。仕事の合間にひと息つく会社員もいる。

 馬の世話に苦戦しながら、安全面にも気を付けて運営を続ける香山さん。「すごく優しくて自慢の馬たちなので、元気がない時のちょっとした気分転換に、見て触って癒やされてほしい」と呼びかける。

 ファームへの入場や動物との触れ合いは無料。スタッフが引いた馬に乗る体験が550円で、外周コース1500円(土日祝日は1600円)などがある。

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