「扶養のまま2年間限定で収入アップを目指すべき?」年収の壁を越えるか迷うパート妻の悩み

読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、年収の壁を超えずに扶養のままでいるべきか悩む36歳パートの女性から。FPの當舎緑氏がお答えします。


子どもが小学生になるのを機に年収の壁を超えようか迷っています…。2年間は、一時的に所得が増加しても、すぐに扶養から外れなくていい制度があると聞きました。事業主に証明書を提出してもらえばいいようです。扶養のまま2年間の収入アップを目指すべきでしょうか。

【相談者プロフィール】

・妻36歳、パート勤務。年収96万円

・夫35歳、正社員、年収500万円 ・子ども6歳

【毎月の支出の内訳】

・家賃:9万円

・食費:8万円

・日用品:1万円

・雑費:1万円

・車関連:5,000円

・生命保険料 2万円

・衣服身の回り品:1万円

・お小遣い:夫4万円、妻3万円

【資産状況】

・貯蓄200万円

・夫は勤務先で毎月iDeCoに2万円を拠出

・備考:今は賃貸なので頭金0円で住宅購入も考えている。

當舎:2022年以降は、「年収の壁」の基準が変化しつつあります。パートやアルバイトなどにも社会保険を適用拡大する、扶養家族が年収の壁を超えられるような支援パッケージが作られました。このなかで、2年間だけは扶養の範囲を超えても、扶養のままでいられ、社会保険に加入しないでいいという制度ができました。

一時的な所得増加の届出ってどんなもの?

101人以上の事業所に勤務するパートやアルバイトは、一定の条件を満たすことで社会保険の加入対象となります(※2024年10月からは51人以上に)。ただ、パート社員などはそもそも時給ですから、「少し様子を見てから社会保険に加入させる」と言われることも多いはずです。そんな不安定なパートですが、一時的に所得が上がって社会保険に加入させられても、「社会保険の負担が重すぎる、そのままの給料が続くわけではないのに…」という不安があるのが今回のようなケースです。このような弊害を防ぐため、社会保険の加入条件に当てはまるほどの収入増加は一時的だと事業主に証明してもらって、扶養かどうか確認されるときに事業主に提出します。

この「扶養のままいられる」届出は2年限定の措置です。では、この届出を提出すればどんどん働いて収入アップしても、2年間は社会保険に加入しないで済むかというと、そういうわけではありません。あくまでも「一時的に」というのがポイントです。継続的に収入が扶養の要件を超えるのであれば、通常通り社会保険に加入して自分で社会保険料を支払う必要があることは間違えないでください。

将来もらえる年金も加味してライフプランを計画しよう

相談者様のような疑問に答えるQ&Aが厚生労働省から公開されています。ここに、今回の支援パッケージは、いわゆる「年収の壁」の当面の対応として導入され、さらに見直されることも明記されています。

次の見通しが立てられない以上、いいきっかけだと思って、扶養を外れるほどの収入を得て社会保険に加入することを検討されてはいかがでしょうか。ちょうどお子様が小学校に入るいいタイミングです。今後のライフプランをしっかり考えてみましょう。相談者様が扶養のままで、今の税金や社会保険料を節約するという考え方もありますが、しっかりと自分で社会保険料を支払うことで、自分の老後資金を増やす手段にもなりえます。夫は、iDeCoを利用して2万円ずつ老後資金の準備をされていますが、相談者様の老後資金も併せて準備することも考えてください。

社保に加入したら年金はどうなる?

以下の表では、社会保険に加入した場合の年金の増額と、加入したことで発生する社会保険料を参考に挙げてみます。ライフプランをしっかりと計画し、妻の働き方も、2年という限定の期間ではなく、継続的な視点で考えていくべきでしょう。

住宅購入の際は自治体の福祉の条件も確認を

相談者様は頭金なしで住宅購入を考えていらっしゃいます。「今の貯金は何かあったときには心配だから残しておきたい」「頭金なしでも毎月の家賃と変わらないし、将来的に自分のためになるのであれば」と購入に踏み切る方もいるでしょう。ただ、最近家計相談をお受けしていると、住宅購入の際の予算が当初よりも「増えた」ということをよく聞きます。住宅購入の条件は家の広さや間取りと購入費が一番という方もいらっしゃるかもしれませんが、条件に、住む自治体の子どもへの福祉も追加してみてください。

子どもへの支援は、住む地域によって様々です。高等教育の就学支援は国として決まっていますが、医療費や教育費のさらなる上乗せは自治体ごとです。どの自治体で子育てをするかによって、子どもにかけるお金が異なってきます。ぜひ、住宅を購入する地域の下調べをきっちりしておきたいものです。賃貸か持ち家かという点はよく論争が起こりますが、どちらにもそれぞれのメリットでメリットがあり、頭金なしといっても、その他の費用、引っ越し費用や固定資産税、修理費用など、持ち家特有の費用がかかることを忘れないでください。今、頭金なしで住宅購入を考えるよりも、妻の働き方や社会保険の適用を見直すことが、家計の見直し方法としては優先となるでしょう。

国民年金加入義務が延長される可能性も

確定ではありませんが、国民年金の加入義務を65歳までと5年間延長するような議論が、厚生労働省の部会でも上がるようになりました。今は60歳まで働くというより、65歳まで、できれば70歳までの勤務延長が望まれる時代です。
いずれにせよ、今回この2年という時限措置を使うということは一時しのぎにしかなりません。将来的な長期のライフプランを考えることが必要でしょう。

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