砺波に癒やされ、能登で再起誓う 「日本で一番きれい」な場所でゲストハウスを フランシス・グルトリンゲルさん一家

砺波に二次避難したグルトリンゲルさん一家=砺波市の夢の平コスモス荘

  ●一次避難2カ月経て、夢の平に

 能登半島地震で被災した能登町の移住者一家が砺波市の夢の平コスモス荘に二次避難し、2カ月に及んだ一次避難の疲れを癒やしている。能登の自然豊かな暮らしに引かれ、中古物件を購入して移り住んだ矢先の災害。先が見えない不安を抱きながらも、「大好きな能登に必ず戻ってゲストハウス開業の夢を実現したい」。砺波で心身を癒やし、能登で日常を取り戻す日を願って再起を誓う。

  ●17年に能登町移住

 二次避難したのは能登町石井のフランシス・グルトリンゲルさん(43)、妻佳登(かすみ)さん(30)、長女澪凪(れいな)ちゃん(2)の一家。

 ドイツ国籍のグルトリンゲルさんは旅行で能登の豊かな自然や文化、食などに引かれ、2017年に京都から移住。青森出身の佳登さんと結婚し、22年12月に能登町で築78年の木造2階建ての建物を購入。漆喰(しっくい)の壁やいろりなどを備えた旧料亭で、昨秋に家財道具を運び入れて移り住み、年明け早々に住民票を移す予定にしていた。

  ●自宅被害、小学校へ

 元日に自宅1階で家族団らんの時間に地震が襲った。身の危険を感じて慌てて駐車場に避難したが、自宅は柱が傾き、床も傾斜し、外壁は崩れ落ちた。母屋とトイレの間に隙間もできるなど損壊。水道の引き込み配管も破損して漏水し、被災直後から近くの小学校で避難生活を続けた。

 移住者を支援する町の担当者から二次避難を勧められ、迷いはあったが、2月29日に砺波市に二次避難した。一次避難所のさまざまな支援に感謝しながら、何かと気遣いを続けた長期の共同生活について、2人は「疲れました」と振り返った。

 夢の平コスモス荘では個室で人目も気にせず、温かい食事や風呂にも入れる。2人は砺波での生活に「ストレスがなく、疲れも癒やせる。本当にありがたい」と感謝し、澪凪ちゃんものびのびと元気に振る舞っている。

 夫婦は「能登は自然豊かで、日本で一番きれい」(グルトリンゲルさん)、「能登は文化が豊か」(佳登さん)とほれ込む。今は大好きな能登での暮らしは叶わないが、グルトリンゲルさんは「いずれは能登に戻って自宅を直して夢を叶えたい。頑張ります」と前を向いた。

  ●保健師が健康支援 砺波市が派遣

 夢の平コスモス荘は2月10日から石川県内の5市町の7家族19人を受け入れている。砺波市は市内の宿泊施設の二次避難者に保健師を派遣し、健康状況の確認などの支援を続けている。

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