遊んだことないのに「また遊ぼう」? 勘違いされやすい関西弁

関西人の「また」の使い方がSNS上で驚かれているところをよく目にする。初対面の人に対して「また遊ぼうよ」と話かける関西人に対して、ほかの地方出身の人は「え、遊んだことないのに、また?」など、「また」という言葉の使い方に違和感を感じるというものだ。

遊んだことないのに「また遊ぼうよ」と言われたら…?

生まれも育ちも関西の筆者は、初対面の人を誘う際に「また」を使うことに違和感はなく、むしろこれまで当たり前に使ってきた。しかし関西以外では、そうではないようだ。

なぜ関西では「初対面」や「初めての場面」でも使うのか。関西弁特有と思われる「また」の使い方について「奈良大学」で方言を研究している岸江信介教授に詳しい話を訊いた。

■ 関西では、回数よりも「別の機会」を強調

──「また」は全国共通で使われている言葉なのに、関西での「また」の使い方は特殊だったとは驚きました。

これはいわゆる「気づきづらい方言」ですね。調べてみると「また」は、日本書紀の時代から使われていた言葉。その頃から意味が変わっておらず、基本的には「再度」「再び」「もう一度」など2回目以降を表します。

──1000年以上前から意味が変わってない言葉なんですね。

そうなんです。もちろん関西でも標準語と同じく「また」を「再び」の意味としても使いますが、今回のように関西では「また」を2回目以降でなくても使う。

この使い方については詳しい研究がされていないので、いつ頃から使われ始めたのかは不明です。なぜこのような使い方をするようになったかも推察にはなりますが、おそらく関西の人たちは「また」を使う際に回数にこだわらないことが挙げられます。

──確かに回数は気にしてないです。

一方でほかの地域、特に東日本の人たちは「回数」に力点に置くようです。だから2回目以降ではないシーンで「また」が出てくると違和感を感じるんですね。

──真逆の捉え方をしていると。

回数を気にしない関西の人たちは「また」を「別の機会」を意味したり、「今度」を強調したりする言葉として使うようになったのではないかな、と思います。本来の使い方である「再び」などの意味を気にしないところは、良く言えば大らか、悪く言えばいいかげん、曖昧な関西人の気質がうかがえますね。

──関西人のあっけらかんとした性格が出ているんですね。

そうですね。大事にしているポイントが違うから、コミュニケーションエラーも起きやすい言葉です。特に東日本の人と会話するときには驚かれることが多いと思います。

たとえば、関西出身の男性と関東出身の女性がお付き合いをしたとして、「また今度この店行こう」などと言えば、「一緒に行ったことないんだけど。誰と間違ってるの?」なんてトラブルになることも(笑)。語形は標準語と同じなので気づきにくいですが、これも方言。同じ言葉でも東西差があるのは非常に興味深いですね。

「また」以外にも、じぶん(関東は自分自身、関西はあなた)、なおす(関東は修理する、関西は片付ける)、ほる(関東は掘る、関西は捨てる)など、東と西で異なる意味を持つ言葉があることに気づくと、おもしろい。

取材・文/野村真帆

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