長崎・大石知事の肝いり「情報発信」 組織整うも、新たな事業展開まだ… 任期は後半へ

定例記者会見で情報発信する大石知事。県庁内組織を改編し、本県のPRに力を入れている(写真はコラージュ)

 2022年知事選で当時全国最年少知事となった大石賢吾氏(41)は1日、任期を折り返した。2年目の取り組みを中心に、自ら重視する「行動力」「県市町連携」「情報発信」の3点で検証した。

 昨年春、就任2年目の大石賢吾・長崎県知事は本格的な組織改編に踏み切った。その目玉は、県の魅力発信やトップセールスを主導する「秘書・広報戦略部」の新設。部内にPRの担当課をつくり、大手飲料メーカーから専門知識を持つ民間人材を次長として迎え入れた。県幹部は「情報発信の強化は知事の肝いりだ」という。
 交流サイト(SNS)の活用にも積極的だ。知事就任当初から個人のX(旧ツイッター)などを使い、自然災害への注意喚起をはじめ、県の政策や公務の様子などを伝えてきた。
 継続してアピールしてきたのは「動物殺処分ゼロ」という目標。保護された犬や猫を紹介し、知事自ら里親を探している。サッカーやバスケットボールの地元プロクラブも熱心に応援。県民の関心を高めようとする姿勢は好感を持たれている。一方で、県議や県職員から「知事が率先しなければならない仕事なのか?」と冷ややかな声も聞かれるが、本人は懸命にやりたい、と意に介さない。
 率先した行動は物議も醸した。昨年夏、全国知事会を欠席してまでも、大阪市内でサッカーのポルトガル代表、クリスティアノ・ロナルド選手と面会した。もともと県は歴史的な交流があるポルトガル政府の要請に応じ、文化やスポーツ、観光など幅広い連携を目指している。「世界的なスター選手に本県のPRに協力をしてもらうため」と釈明に追われた。
 ただ今のところロナルド選手側からの発信はない。知事の行動は国際交流担当者も把握しておらず、県議会特別委員会では、部局内の情報共有も問題視された。
 秘書・広報戦略部の新設で組織体制は整った。だが1年がたとうとしているのに、これまで耳目を集めるような新たな事業展開は「できていない」(同部幹部)。県政のプロモーションは中村法道前知事が3年前に打ち出したプロジェクト「長崎の変」が今も基盤となっており、福山雅治氏ら本県出身著名人が地域猫を演じてPRを続けている。
 全国でも特に人口減少が深刻なだけに、企業や団体とも連携しながら、定住促進や交流人口の増加につながる情報発信は、県政に欠かせない。
 県が策定する「新しい長崎県づくりのビジョン」には、イメージアップを図る方針も明記。大石氏は「本県には世界に自慢できるポテンシャルがある」と強調し、新年度は秘書・広報戦略部を中心に新たな「長崎ブランド」を構築するという。
 地域の魅力を国内外の多くの人々に伝えられるかどうかが、任期後半に入った大石県政の成否を左右する。

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