「できることしている」「抜本的な経営改革を」津軽鉄道(青森県)と五所川原市、支援策巡り溝

五所川原市と中泊町の間を90年以上にわたり走り続けている津軽鉄道。利用者の減少などで厳しい経営を強いられている=今年1月

 青森県五所川原市が、同市と中泊町間を運行する「津軽鉄道」への支援策として行っている固定資産税の課税免除を、従来の3年間延長から1年限りの延長にとどめることに決めた。人口減少とともに利用者が減る中、市が抜本的な経営改革を迫った形だが、津鉄側は「精いっぱいできることをしている」と訴え、両者の考えの溝は埋まっていない。市は2024年度、津鉄の経営改善計画の達成度合いによってはさらなる延長には応じない姿勢で、津鉄は試練に立たされている。

 「今の津鉄からは(経営改革への)ビジョンが見えない。社長は将来のことを組み立て、銀行や関係市町村に相談するなりして(鉄道を)守るための抜本的な経営改善策を作らないといけない」

 2月15日、課税免除の延長を1年とする議案が臨時市議会で可決された後、取材に応じた佐々木孝昌市長は語気を強めた。

 市は昨年10月、「総合的な判断」として24年度以降、課税免除の延長に応じない意向を津鉄側に提示した。津鉄側は「打ち切りは経営へのインパクトが大きい」として継続を要望。協議の末、市の求めに応じ津鉄が今年1月に提出した経営改善計画を一定評価する形で「保留の意味合い」(佐々木市長)として24年度1年間のみの免除延長が決まった。

 マイカー普及や急速に進む沿線の人口減で、津鉄の経営は厳しさを増している。輸送人員(利用者数)は、最多だった1974年度は256万人超あったが、2014年度に30万人を割り、22年度は23万2057人と1割以下に。経営状況にも如実に表れ、20年度以降の経常損益は2千万円から6千万円の間で赤字が続いている。

 こうした状況を踏まえ、佐々木市長は「将来(津鉄の経営は)必ず難しい場面が出てくる。避けて通ろうとすればするほど傷が大きくなる」と、課税免除に頼る経営から脱却する必要性を説く。

 これに対し津鉄の澤田長二郎社長は「コロナ禍もようやく終わり、赤字解消のために精いっぱいできることをしている」と反論。「津鉄は地域住民にとって重要な交通機関。市が固定資産税を免除してくれることが会社にとっての励みにもなる。地域で鉄道を支える、という心の面を大切にしてほしい」とし、市による長期的な支援の必要性を訴える。行政による津鉄への支援を巡る両者の考えは隔たりがある状態だ。

 野党会派の市議の一人は「どこの地方鉄道も経営は厳しく、行政の支援なしではやっていけない。市の財源が苦しいのなら『津鉄のために使ってほしい』と全国から寄せられたふるさと納税のお金を使えばいい」と提言。与党会派の市議の一人は「津鉄を全く使わない市民が多くいるのも事実。ただ、子どもたちのためにも津鉄はなくてはならないもの。お金うんぬんを超えた議論をしなくてはいけない」と語る。

 津鉄への固定資産課税免除による支援を巡っては、中泊町が昨年12月、免除期間を24~26年度の3年間延長することに決め、沿線自治体で対応が分かれた。

 駅舎でイベントなどを開いている同町の濱舘豊光町長は「駅舎を地域のために使わせてもらっている。一緒に津鉄を守っていきたいという思いがある」と説明。「松山市の(観光シンボルになっている)『坊っちゃん列車』のようなやり方も模索しては。場合によっては(同町の)津軽中里駅まで来ないインバウンド(訪日客)に特化した観光列車とする方法もあるのではないか」などと語り、鉄路の存続には、もっと踏み込んだ方策の検討が必要としている。

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 五所川原市の固定資産課税免除 合併前の旧五所川原市時代の1994年度に開始。津軽鉄道からの陳情に応える形で経営支援のため継続されており、これまで3年間ごとに延長されてきた。免除額は年によって異なるが、おおむね年間400万~500万円ほど。ほかに市は毎年、線路の補修や砂利の入れ替えなどの費用も補助している。

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