西日本豪雨の復旧作業で見つかった思い出の品 広島市の保管期限が迫る「持ち主に返したい」

【防災プロジェクト】西日本豪雨で被災した「思い出の品」 保管期限が迫る

6年前の西日本豪雨の復旧作業のさなか、土砂の中から掘り起こされた「思い出の品」は、今も持ち主が見つからず、保管されているものもありますが、その保管期限が迫っています。

たくさんのぬいぐるみに、鍵盤ハーモニカやサッカーボール。2018年の西日本豪雨で被災し、がれきや土砂の中から見つけ出された「思い出の品」です。

広島市は持ち主の元に返したいとの思いで保管してきましたが、2023年度末で保管を終えるといいます。

■広島市環境政策課技師 筒井優衣さん

「大きく3つ理由がありまして、1つは保管を続けて5年になるんですが、経年劣化が進んでいること。あと継続してずっと周知はしているんですが、来られる方が少なくて返却の見込みが薄いということ。あとは次の災害に備えて、保管スペースの確保の観点から保管を終了することにしております。」

中でも決定的なのは、取りに来る人がいないことです。ホームページのほか、広報誌や市の公式SNSでも呼びかけていますが、訪れた人はわずか5人。3年前からは途絶えています。

保管されている物の中には、小さい子が書いたと思われるスケッチブックや、大会の受賞メダルもあります。見つかった物は丁寧に洗浄して、保管しています。その中には名前が書かれているものもあります。

■広島市環境政策課技師 筒井優衣さん

「名前がついているものもいくつかあるんですけど、探している方に取りに来ていただくということにしておりまして。災害時のことを思い出したくない方もたくさんいらっしゃるかなと思いますので、そういった対応をしております。」

実際に、2014年の広島土砂災害の際も、名前の分かる持ち主に案内を出しても、訪れた人はいませんでした。現在、48点の物品が保管されていますが、これだけではありません。

■広島市環境政策課技師 筒井優衣さん

「平成26年の災害(広島土砂災害)のときに、被災者の方からもう少し写真を多く保管してほしいという声がありましたので、30年のとき(西日本豪雨)には、そういった声を受けてなるべく多く写真を発見して保管しておくように対応いたしました。」

現在3093枚の写真が保管されています。これまでに被災地での返却会も4度開催し、1人の持ち主に112枚を返却することができました。

■広島市環境政策課技師 筒井優衣さん

「(受け取った人は)ひとつひとつじっくりと見られて、とても嬉しそうなご様子で、私どもにもありがとうございますと感謝の気持ちを述べていらっしゃって、私も大変嬉しい気持ちになりました。」

しかし、保管終了は3月末に迫っています。少しでも持ち主の元に戻るよう、2023年7月から、市のホームページでも一覧が見られるようになりました。

■広島市環境政策課技師 筒井優衣さん

「少しでも気になる方がいらっしゃったら、気軽にこちらにお問い合わせいただいたり、窓口に気軽に来ていただければなと思っています。」

他の自治体の対応は、熊野町では、2019年の追悼式で被災者に説明の上、処分したということです。東広島市と坂町では当面保管を続けますが、呉市と海田町では当初から保管をしていません。環境省の指針で保管を推奨していますが、判断は各自治体に委ねられており、処分の判断についても難しいそうです。

広島市は3月末までと決めたことで、公式SNSでも画像を掲載して呼びかけています。一方で、写真は個人情報保護のため、訪れないと閲覧はできません。気になる場合は、電話番号に気軽に問い合わせしてほしいとのことです。

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