「ヴェルトクラッセ」世界的な名手ふたりの礎を築いたドイツ人監督が元日本代表キャプテンを絶賛「あれで40歳は信じられない」

2月下旬のアリアンツ・アレーナ。バイエルン対RBライプツィヒのビッグマッチを控えたメディアルームで、著名なドイツ人指揮官がぼんやりとモニターを眺めていた。監督としてブンデスリーガ1部通算99勝の実績を誇るミルコ・スロムカ氏だ。

恐れ多くも声をかけると、56歳の紳士は柔和な目で「ヒロキはいまどこでプレーしているんだい?」と逆質問。2010年1月~13年12月のハノーファー時代に指導した酒井宏樹(現・浦和)の現状が気になる様子で、こちらの言葉に「うん、うん」と熱心に耳を傾けていた。そして気遣ってくれたのか、みずから日本人選手の印象を話し始める。

「ヒロキと言えば、そうそうイトウ(シュツットガルトの伊藤洋輝)はいいプレーヤーだね。あとはイタクラ(ボルシアMGの板倉滉)を気に入っているんだ」

現在はドイツ『スカイ・スポーツ』のエキスパートを務めているので、古巣のハノーファーやシャルケ以外のクラブ事情にも明るいはずだ。そこで長谷部誠(フランクフルト)の印象を聞いてみた。日本サッカー界にかぎらず、ブンデスリーガのレジェンドとも称される元日本代表キャプテンは、ベテラン監督の目にどう映っているのか。

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「(肩をすくめて一拍置き)ヴェルトクラッセ。そう、ワールドクラスだよ。今シーズンはあまり出場していないけど、先日の試合(22節のフライブルク戦)で久しぶりにフル出場していた。あれで40歳はまったくもって信じられない」

そんなスロムカ氏はハノーファー2次政権が終焉した19年11月を最後に現場から離れ、解説業に専念している。だが、本人は「エキスパートもいいけど、やっぱりね」と監督キャリアの再開に意欲的で、同世代のドイツ人指揮官(広島のミヒャエル・スキッベ監督)の近況を伝えると「もちろん、とても興味がある」とJリーグへの関心を示した。

20歳のマヌエル・ノイアーをシャルケの正GKに大抜擢したほか、若きイバン・ラキティッチの才能も見抜くなど、のちに世界的な名手となる二人の礎を築いたスロムカ監督。まだ、56歳。ピッチサイドに戻って来る日を楽しみに待っていたい。

取材・文●遠藤孝輔(ワールドサッカーダイジェスト編集部)

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