【新NISA】定年前後はどんな投資商品を選ぶのがいい? 確定拠出年金とNISAの出口の違い

新NISAの登場で、いよいよ日本人の行動が「貯蓄から投資」へ大きく変容している様を感じられるようになりました。投資は時間を味方につけるのが鉄則ですが、今回はそろそろ老後を考える定年前後の方の投資商品選びをお伝えしたいと思います。


いつ投資をやめるのか?

筆者のライフプラン相談にお見えになる方は、60歳前後の方が大半です。共感を求められるのか、ファイナンシャルプランナーは同年代を選ばれる方が多いのかも知れません。今回は、少し年配の方々のこれからの投資との向き合い方をお伝えしたいと思います。

「ネット証券で口座を開いてみたものの、なにを選んで良いか分らない」という質問がたくさんでます。特にネット証券は扱う商品数が多いのがメリットでもあるのですが、そこに最初は戸惑われるのも分かります。

筆者はまず、「その投資、いつやめて使うお金にしますか?」ということをお聞きすることが多いです。なぜならば、定年前後の方であれば出口を見越した商品選びをすることが非常に重要だからです。

確定拠出年金の止め方とNISAの止め方は違う

会社で企業型確定拠出年金(企業型DC)をしている方も多いことから、最初のアドバイスは資産状況を確認するところから始まります。今回は企業型DCとNISAの出口の違いをご説明します。

確定拠出年金の止め方としては、資産を一括で受け取る方が税制優遇のメリットを受けやすくなります。例えば60歳で受け取るのであれば、それまでの加入期間を勤続年数として退職所得控除が計算できます。

ただし企業型DCと同時に退職一時金も受け取る場合、そちらと合算でかつ退職所得控除はどちらか一方の利用となるため注意が必要です。定年時の勤続年数が37年といった場合、退職一時金の退職所得控除が1990万円です。退職一時金の額がそれより下回る場合は企業型DCも一緒に受取り、退職所得控除を有効に利用することを考えることが多いです。

一括受取りを視野に入れると、選ぶべき投資商品はバランス型ではなく日本株や先進国株、新興国株などのアセットクラスの投資信託を組み合わせてポートフォリオを組んだ方が良い場合もあります。

これは一括受取り直前の株式市場の暴落などで資産が目減りするリスクを抑えることが目的です。そのためには、スイッチングを行う必要があるからです。スイッチングとはあるファンドを売って、その資金で別のファンドを買う行為です。例えば新興国株を売却し、日本の債券に投資する投資信託を購入していきます。

ある程度の時間をかけて、投資リスクを抑えたポートフォリオ、例えば受取り前は全額定期預金などにスイッチングをしておけば、引出後の計画もより立てやすくなります。

企業型DCを全額受け取った後であっても、厚生年金加入で働いている方であれば、iDeCoの利用が可能です。例えば65歳まで5年間iDeCoを利用するとその間掛金は全額所得控除になるため節税になります。またこの5年間で新たに退職所得控除200万円を創ることができるため、受け取る際にも税制上のメリットとなります。

この退職所得控除を利用して65歳にすぐに資金を引き出したい場合、前述した通りリスクのとりかたは時間で考えます。前半では株式中心で投資を行い後半は安全資産を多くすることも必要です。

iDeCo加入による退職所得控除は、いつ引き出しても200万円利用できるので、時間がとれる方は最長75歳まで運用のみ継続可能です。その間積極的に運用をしたい場合、ポートフォリオはもちろん違ってきます。

75歳から20年間の年金受け取りを選択すると、運用しながら取り崩す手法も選べます。その場合は公的年金等控除を利用しますが、大企業の方で確定給付企業年金(DB)が60歳から75歳までの確定受取りという場合、その後の年金としてiDeCoを活用することも可能です。

75歳からの年金受け取りを考えると、60歳でなにも企業型DCを一括受取りしなくても良い方もいらっしゃいます。特に退職一時金で退職所得控除のほとんどを使いきり、企業型DCを受け取ると課税が大きくなるような場合、DB終了後の年金としてDCを利用することも有効です。

引き出したお金の次の行く先

企業型DCあるいはiDeCoの資金をすぐにそのまま老後の生活費に充てる方もいるでしょう。その場合、引き出した資金はそのまま銀行の定期預金あるいは個人向け国債をオススメすることも多いです。数年の間に使うお金であれば、投資には向かないからです。

十数年後に起こるかも知れない認知症への備えや介護または配偶者が亡くなった後の施設入居費用にしたい場合は、保険に充てる場合もあります。

例えば、認知症になってしまうと、自分のお金を自由に使えなくなってしまいます。いわゆる「凍結」です。もちろん後見人をつけるなど対策もありますが、そういう時に保険の代理人請求を利用するとスムーズに資金を引き出し、その後の生活費や介護費用に充てることも可能です。

あるいはご自身が亡くなったあとに遺された配偶者がそのお金で老人施設に入るということであれば、終身の死亡保険にすることもできます。また死亡保険であれば相続時に別途控除が認められますので、相続税の納税資金対策としての活用も考えられます。

積極的に運用を行いたいということであれば、DC資金をNISAに移していくこともできます。NISAはDCと異なり、投資信託の売却はそのままNISA口座からの資金の引出となります。そのため、仮にどこかのタイミングで一括で引き出したいという場合も、DCのようにスイッチングができません。その点を考慮すると、NISAで運用すべき投資信託はバランスファンドのような商品の方が扱い易いのではと考えます。

定年退職後もなおつみたて投資が継続できる方だけではないでしょうから、今回は55歳から65歳までNISAでつみたてて10年間の運用期間を経て、取り崩すパターンを考えてみます。

例えば、世界中の株式に投資をするような投資信託もある意味世界の株式市場の状態に合わせて割合が変化するバランスファンドと言えます。このような商品を1本選んでみたとしましょう。

恐らく債券などが含まれていない投資信託なので、資産額の変動はそれなりにあると思います。それを考えると、10年つみたてた資金を75歳から「お小遣い」のように引き出していくのが良いのではないでしょうか。

お小遣いですから、その月にマーケットが良ければ普段よりちょっと引き出せる金額も大きくなり優雅な1ヶ月が過ごせるでしょう。逆にマーケットが悪ければ、節約の1ヶ月です。でもそもそもお小遣いであれば、楽しみを増やしたり減らしたりできるわけですから、気持ちにゆとりをもって投資と向き合えるのではないでしょうか?

取り崩しについては、今後金融機関がどんどん便利なツールを開発してくるでしょうから、あまり面倒に思う必要はないと思います。つみたてをする際は「定時定額」が効率よい方法と言われていますが、取り崩しの際は「定時定率」の方が効率的だと良いと言われています。すると75歳から5%ずつ取り崩す設定をすると、20年くらいで取り崩しが終了するイメージです。実際には、引出後の資金は運用されていきますので、ある程度の運用利回りが継続すると20年以上お金が残る計算です。

お小遣いではなく、生活資金にということであれば、選ぶべき投資信託は株と債券、そして日本と外国といった基本の4資産に投資をする均等バランスのような投資信託の方がふさわしいかも知れません。

先ほどNISAはスイッチングできませんと申し上げましたが、新NISAは枠の再利用ができるので、やろうと思えばスイッチング的なことは可能です。例えば若い方であれば、途中で住宅購入のためにまとまった資金を解約して、新たなつみたての際は投資商品を変えて次のステージのリスクに備えるといった方法です。

ただ枠を再利用できるのは翌年以降であることなどを考えると、引出をする際には、毎月少しずつ取り崩していくと最初から決めておいた方が良いのではないかと思います。

今回は老後を見越した投資との付き合い方をお伝えしましたが、これもほんの一例に過ぎません。十人十色、投資も個人個人により目的が異なります。これからの投資方法については、一度専門家とお話をしてみることで視野が広がることもあるでしょう。参考にしていただけましたら幸いです。

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