ご用心(3月5日)

 一つだけ使えるとしたら? 「どこでもドア」で世界中を旅しようか。「タケコプター」で大空を自由に飛び回ろうか―。ドラえもんが繰り出す「ひみつ道具」。子どもでなくても、わくわくする▼2千種類近くあるともされる。放送するテレビ朝日のホームページにカタログが掲載されている。時間を操れる「タイムふろしき」、何でも暗記できる「アンキパン」、仮定を現実にする「もしもボックス」…。何不自由ない暮らしが手に入る。作者の藤子不二雄さんのコンビは、暗い戦中に少年時代を過ごした。空想の世界に明るい夢を追い求めたのかもしれない▼これも「ひみつ道具」の一つと言えようか。投資の新NISAが注目を集めている。儲[もう]けが出ても非課税だから、お得という。県内の金融機関には宣伝ののぼり旗が立ち、セミナーも熱気を帯びているようだ。低金利のご時世で預貯金の利息は、すずめの涙。将来への備えの受け皿として頼られる▼とはいえ、ご用心。ドラえもんの仲良し、のび太君は道具に頼りすぎて失敗することも。投資の世界に成功の「ひみつ道具」はないのだろう。アニメ界のアイドル君がポッケの中をどんなに探しても。<2024.3・5>

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