多摩地域 給食費無償化で「格差」 背景は?

「多摩地域の給食費無償化」の現状について詳しくお伝えしていきます。新年度予算案のなかで多摩地域の26市のうち小・中学校の給食費無償化の方針を12市が打ち出しましたが、残る14市では予算案には盛り込まれませんでした。東京都が自治体に費用の半額を補助する方針を打ち出したことが、「後押しになった」と無償化を進める自治体がある一方で、「半額だけでは足りない」と二の足を踏む自治体もあり、多摩地域の中でも格差が生じる事態となっています。

小池知事:「国に先行して、公立小中学校の給食費の負担軽減に向けた支援を実施することといたしました」

東京都は、新年度から都内の自治体が取り組む給食費の負担軽減策の半額を補助する方針を1月に発表しました。これが「無償化の後押しになった」と複数の市長が話しています。

八王子 初宿市長:「非常にありがたいです。これは単独でやるか補助でやるかで大きく違う。大きく踏み出す、大きな背中を押してくれたものと理解している」

立川市では、去年9月の市長選挙で無償化を掲げた酒井市長が実現を明言しました。

立川市 酒井市長:「1人あたりの年間給食費は約5万円ということで、子育てをしている家庭には5万円の負担軽減、その浮いたお金を子どもたちの学費や子育て費用に使っていただければと考えている」

しかし一方で、立川市の隣にある国立市では「無償化の方針」は示されませんでした。

国立市民:「早く追いついてほしいなという。府中とか、充実したところに挟まれているので差を感じます」「無償が当たり前となってくると「お金が取られてしまう」とそれはうらやましいなと思う。(無償化は)なったらいいなというのが本音です」

国立市の永見市長は、無償化しない理由を次のように語りました。

国立市永見市長:「義務教育の一環としての給食を財政力で無償・有償というような格差を持ち込むのはいかがなものか。国なり東京都が全体として無償化を図っていくべきだ」

23区では多くの自治体で給食費の無償化が進む中、多摩地域では半数に及ばないという背景にはなにがあるのでしょうか?多摩地域で取材を進める白井記者に聞きます。東京都が示した半額の補助でも実現に踏み出せない自治体があるんですね。

白井記者:「あきるの野市の中嶋市長は「都が半分補助しても毎年1億5000万円ほどの市の負担がかかる。現状では慎重に考えざるを得ない」と話していまして、調布市の長友市長は実現はするものの、「23区とは財政的な基盤が違う。決して苦慮せずに取り組むわけではない」と発言するなど、多摩地域の財政レベルでは全ての自治体での無償化は現実的ではないといった声があった」

財政的に厳しいという事情が大きいんですね。そのなかでも無償化に踏み切れた自治体がありますが、この背景には何があるんでしょうか?

白井記者:「ポイントは23区の「無償化」とのせめぎ合いだと思います。今回、無償化されたうち、こちらの赤い部分の自治体は23区に接しています。それぞれ「子育てしやすい町」を打ち出しているんですが、23区と無償化で差がついてしまうと、多摩地域の自治体で暮らしたいという子育て世帯が減ってしまうという危機感があるのではないかと思います」

子育て世帯に住む場所として選んでもらうもらうというのはこれからの自治体にとって大きな政策課題ですからね。

白井記者:「そしてさらに取材を進める中で大きな要因とみられるのは「市長選挙の影響」です。無償化を打ち出した立川・青梅・武蔵野・府中は今年度に市長選挙がありました。また、福生・昭島においてはことし選挙が行われます。直近の多摩地域の選挙では、毎回、無償化の進め方が大きなテーマとなっていまして、市の幹部たちに取材すると「選挙を行うと無償化が進む」と皮肉交じりに話していたのが印象的でした」

無償化が進む背景には候補者たちの思惑が見え隠れもするということなんですね。

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