優れた研究への助成活動に取り組む公益財団法人「矢崎科学技術振興記念財団」(佐藤慎一理事長)が2月29日、都内で本年度の矢崎学術賞贈呈式を開いた。佐賀県内からは、産業技術総合研究所(産総研)九州センター(鳥栖市)主任研究員の鈴木大地氏(35)=同市=が奨励賞に輝いた。カーボンナノチューブ(CNT)の新たな加工技術に関する研究が評価され、鈴木氏は「社会に役立つ科学技術の発展に貢献したい」と意気込みを語った。
CNTの膜は高い導電・熱電特性や、紫外線からテラヘルツ帯の電磁波まで広い帯域を吸収する特性を持ち、強度が高く折り曲げが可能など、従来の半導体材料にはない長所を持っている。従来は素材として必要な形や大きさに加工することが難しいという課題があったが、鈴木氏は土台にレーザー加工などであらかじめ必要な形状を用意し、意図した位置にのみCNT膜を生成する技術を確立した。
鈴木氏は「自由度の高さが特徴」と語り、マイクロメーターからセンチメーター単位まで幅広いサイズに対応できると説明。6Gに対応した高周波フィルターやインフルエンザウイルスの検出など幅広い分野への応用が期待できるという。
矢崎学術賞は過去に財団から助成を受けた研究のうち、成果が顕著なものに贈られる。鈴木氏は2018年度に助成を受けていた。(大橋諒)