【中山牝馬S】注目はSpecialの血が濃いルージュエクレール ゲートを克服し得意の中山で巻き返し

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3つのファクターから推奨馬を見つけ出す

今回は3月9日(土)に中山競馬場で行われる中山牝馬Sについて下記3つのファクターを組み合わせる、コンプレックスアナライズで分析を行っていく。

・レースの好走馬及び凡走馬の共通項を探る「重要データ」
・目には見えない上積みを探る「前走の敗因」
・適性と素質を知るための「血統評価」

特別登録のあった18頭のうち除外対象のホウオウラスカーズを除いた17頭を検討対象とし、データは過去10年を参照する。

重要データ:重要血統「Special」

中山牝馬Sはレース全体の単勝回収率が112%、複勝回収率が90%となっていて荒れやすいレースだ。その中でも注目すべきは「Special」の血統だ。主にNureyev、Sadler's Wellsなどから競走馬に影響を与えている。Specialは機動力や底力が特徴的で、この血統は急坂がありトリッキーな中山内回りコースにおいては有効と言える。

父方内包馬は【4-6-4-31】で単勝回収率82%、複勝回収率124%。母方内包馬は【5-3-5-30】で単勝回収率108%、複勝回収率104%、父と母の両方に内包している馬は【2-1-2-5】で単勝回収率221%、複勝回収率147%。今回上位人気が予想されるコスタボニータ、ラヴェルはSpecialを有していない。

【Specialを内包していない出走予定馬】
・アレグロモデラート
・グランスラムアスク
・クリノプレミアム
・コスタボニータ
・フィールシンパシー
・ラヴェル

【Specialのクロスを内包する出走予定馬】
・ルージュエクレール
・ルージュリナージュ

前走の敗因:ターコイズSのルージュエクレール

ルージュエクレールの前走はターコイズSで結果は14着。このレースは前半3F35.2-後半34.3で後傾0.9秒というスローペースで前有利の展開のレースとなった。今回も出走を予定しているフィールシンパシーが楽に逃げて2着、それを見るような形で進めたフィアスプライドが1着という結果だった。フィールシンパシーは次走ニューイヤーSで9着と負けているように前にいた馬は割引が必要だ。フィアスプライドも展開利は受けていたから着順どおり評価するのは危険だ。

一方、ルージュエクレールはアオるようなスタートになり、大幅に出遅れてしまった。上がり3位の脚を使ったが、この展開では差し届かずの14着。同じ東京サラブレッドクラブ所属馬のルージュリナージュもゲート一息で上がり最速も、差し届かずといった内容。ルージュエクレールについてはこの中間、かなり入念にゲート練習を行っている。調教では上手く出ることができているようでレースでも同様に好発を決めれば3勝クラスを勝利した中山の舞台で前進があっても良いだろう。

血統解説:ヒップホップソウル、ラヴェル、ルージュエクレール

・ヒップホップソウル
日本での牝祖は3代母ダンシングキイ。同馬は繁殖として非常に優秀でエアダブリン、ダンスパートナー、ダンスインザダーク、ダンスインザムードなど多数のGⅠ級の名馬を輩出している。本馬は祖母にダンスインザムードを持つ良血馬で活力は十分だ。

このファミリーはタフなタイプの馬が多く、その上、本馬はキタサンブラック産駒で、そのタフさが強調されたような馬に出ている。先行勢多数でタフな展開となりそうな今回はチャンスがありそうだ。

・ラヴェル
日本での牝祖は10代母シユリリー。3代母キョウエイマーチを根幹としてファミリーが栄えていて、バーデンヴァイラーやマルシュロレーヌの姪にあたる血統だ。ラヴェルの母サンブルエミューズはキョウエイマーチや2代母ヴィートマルシェほど一本調子なタイプではなくてギアを兼ね備えたタイプ。本馬はキタサンブラック産駒の牝馬なので、本当は溜めて一瞬の脚を使うのがベストな競馬だろう。

その意味では前走の京都記念で前進しているが、今回は距離短縮こそ良いものの中山替わりはどうか。重賞を勝っているように東京のマイル~1800mがベストなタイプだろう。

・ルージュエクレール
日本での牝祖は3代母ウェイブウインドだが実質的には祖母シラユキヒメが牝祖だ。本馬は違うが、シラユキヒメ牝系といえばユキチャン、ブチコ、ソダシといった白毛の活躍馬が目立つ一族。毛色の遺伝子は競争能力とは全く関係ないので、白毛じゃないからだめということは一切なく、事実シラユキヒメ牝系にはメイケイエールという鹿毛の活躍馬もいる。この一族はパワーがあることが一番の特徴で、牝馬でもダートのトップレベルで走ることができる。

本馬はエピファネイアをつけたことから芝馬に出たがSpecialを2本持つ形からも機動力、パワー、底力は揃っている。中山牝馬Sはベストな舞台であり、どうにか課題のゲートを決めて調教の成果を見せてほしい。

Cアナライズではルージュエクレールを推奨

今回はルージュエクレールを推奨する。ゲートが大きな課題で中々上手く決めれず、決まってもタメを作る必要があるムラの激しいタイプ。しかし、そういうタイプが穴をあけてきたのが中山牝馬Sというレースだ。この馬にとって中山コースがベストなのは間違いないので、うまく噛み合えば十分勝機はあるだろう。

【ライタープロフィール】
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほか「競馬王」など商業誌での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。



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