線審に暴言を吐いたルブレフの処分が軽減!獲得賞金とランキングポイントも回復「この騒動から学び、より良い選手になる」<SMASH>

先週行なわれた男子テニスツアー「ドバイ・デューティフリー選手権」(UAE・ドバイ/ハードコート/ATP500)でまさかの失格処分を受けた世界ランク5位のアンドレイ・ルブレフ(ロシア)が、没収されていた獲得賞金とランキングポイントを取り戻せることとなった。

事件は現地3月1日に実施されたアレクサンダー・バブリク(カザフスタン/同23位)との準決勝で起きた。ファイナルセット5-5の場面でバブリクの深いボールがイン判定となりラリーが続くと、そのままポイントを獲得しサービスゲームをキープ。ルブレフはボールがアウトだったと主張しながら線審に詰め寄り、判定が覆らなかった怒りのあまりロシア語で「お前はバカだ!」と言い放ったという。

この暴言をロシア語の理解できる別の線審がスーパーバイザーに報告。ルブレフには「スポーツマンシップに反する行為」を理由に失格処分が下された。これに対してルブレフは「そんなことは言っていない」などと抗議するも受け入れられず。結局大会からの追放と同時に本大会で獲得したポイントと賞金を全て失う羽目となった。

しかしその後ルブレフ本人がATP(男子プロテニス協会)控訴委員会へ異議申し立てを行なった結果、没収された賞金157,755ドル(約2370万円)は全て返還されることとなり、その額から36,400ドル(約547万円)の罰金を科されることが決定。結果的にルブレフは差し引きでおよそ12万ドル(約1800万円)の賞金に加え、ベスト4進出で獲得した200ポイントも取り戻すこととなった。

海外メディア『UBITENNIS』によると、今回の処分軽減においては「関係者からの証言や提供された音声資料の検証結果が考慮された」という。ルブレフは4日に更新したインスタグラムを通じ、控訴委員会への謝意をこう綴っている。
「私の控訴を承認し、ドバイ準決勝での失格とランキングポイント及び賞金を剥奪するというATPの当初の決定を方針転換してくれた控訴委員会には感謝しています」

実は今回の一件についてはルブレフが、本当にロシア語で暴言を吐いたかを大会側が映像等で十分に検証しないまま失格処分を下したと報じられていることもあり、アレハンドロ・ダビドビッチフォキナ(スペイン/男子23位)やダリア・カサキナ(ロシア/女子12位)ら一部ツアー仲間からは「ビデオレビューでちゃんと確認すべきだった」といった擁護の声が上がっていた。

そうした状況を踏まえてルブレフは、今後は失格処分を下す前の詳細な検証を要求するとともに、最後は改めて感謝の言葉で締めくくった。

「将来的にはATPがルールを詳しく検証して変更を加えること、そして明らかな証拠がないのにもかかわらずビデオレビューを認めないまま審判が試合の結果を強制することはできなくなることを願っています」

「ドバイ準決勝を勝ち切れなかったのは残念だが、この2日間の間に皆さんからいただいたサポートには感謝しています。本当にたくさんのメッセージを受け取りました。この騒動から学び、より良い選手、より良い人間になれるよう努力することを約束します」

線審に激しく食ってかかる行為自体は、たとえロシア語の暴言が吐かれていないとしても許されるものではない。ただすぐに当初の決定が覆されたことを考えると、一連の処分は何だったのかと思わざるを得ない。今後に向けてより明確な基準を設けるべきだろう。

文●中村光佑

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