バーレーンGPの角田裕毅に対する各国メディアの評価は? 順位入れ替えついては理解を示す一方で「冷静さの喪失は許されない」との指摘も

ビザ・キャッシュアップRB(以下RB)の角田裕毅にとって、2024年F1開幕戦のバーレーン・グランプリは、後味の悪いものとなってしまった。

予選では、10番手のオスカー・ピアストリ(マクラーレン)にわずか0.007秒届かずQ3進出を逃したものの、11番グリッドは入賞を十分可能にする位置であり、実際に決勝ではスタートで10番手に浮上し、その後のペースも悪くなかった。しかし、2度目のタイヤ交換の後で順位を落とし、終盤ではケビン・マグヌッセン(ハース)に肉薄するも攻めあぐねる状況で、背後にチームメイトのダニエル・リカルドが迫ってきた。

ソフトタイヤのリカルドの方が、ハードタイヤの角田よりペースが良かったことで、チームはポジションの入れ替えを決定。しかし、リカルドのVCARB01もマグヌッセンをオーバーテイクすることはできないまま、リカルドが13位、角田は14位でレースを終えることになった。

チームからの指示を受けた後の角田の反応、そしてレース後にリカルドを怒らせた「ダイブボム」については、各メディアが様々な見方を示しているが、決して悪くなかったパフォーマンスが、この一件によって薄れてしまったことは確かだろう。
10点満点での採点と寸評を見てみると、英国のF1専門サイト『PLANETF1.COM』 は及第点の「6」を与え、「角田はチームの指示に反抗したが、その理由は簡単に理解できる。彼はマグヌッセンに対してDRS圏内にいたし、残り周回はわずかということで、リカルドとの入れ替えで順位が固定される可能性が高かった。そして、角田がルーキーイヤーに見せた気まぐれさや苛立ちが、とりわけレース後のインラップで一時的に再現された。彼は近い将来に、再びそれが起こらないことを望んでいるだろう」と、綴っている。

同じく英国のモータースポーツ専門サイト『CRASH』は「7.5」と高採点としたものの、「バーレーンでポイント獲得の可能性があったはずだが、レース後半の2回目のピットストップが、角田をジョウ・グァンユ(ザウバー)とマグヌッセンの後ろに落としてしまった」と、角田のレースを決定づけた場面に言及した。

一方、『MOTORSPORT WEEK』の採点は「6」で、「予選ではターン8の下り坂でミスをしてわずか0.007秒差でQ3進出を逃し、レースではリカルドに対してアドバンテージを最大限に活かしたものの、2度目のピットインで複数のライバルにアンダーカットされた」と、日本人ドライバーのレースを振り返った後、リカルドとの一件については以下のように指摘している。

「レース終盤にチームメイトを先に行かせるよう指示された時には緊張が高まったが、彼の不満は理解できるものだった。しかし、彼のリアクションは問題を引き起こした。クールダウンラップで怒りを露わにした際には、RB同士が接触寸前まで迫った。チーム内対決で負けられない両ドライバーではあるが、今はチームの再構築に助力する必要がある」『TOTAL MOTORSPORT』は、ヴァルテリ・ボッタス(ザウバー)、アルピーヌ勢と並ぶ最低タイの「4」を与え、「レッドブルのシート争奪戦に名乗りを上げるつもりでいる角田にとっては、望んでいたレースではなかった。11番グリッドからポイントを狙う必要があったが、そのような様子は見られなかった」と厳しく評した。

また『RACE FANS』は、「57周中51周で、ユウキはチームメイトに対して先行していた。最終スティントでは2セット目のハードタイヤを装着し、アンダーカットで前に出たマグヌッセンを追ったものの、追い抜きはできなさそうだった。彼がリカルドを前に出すという指示に同意するかどうかは別として、フラストレーションからチームメイトにダイブボムを仕掛けたのは、ユウキにとって最高の瞬間ではなかった。ただし、これが彼の評価に影響することはない」として、こちらも採点は「6」としている。

スペインのF1専門サイト『F1i.com』も同採点で、「RBのチーム代表としての初めてのポストレースブリーフィング後、ローラン・メキーズは何を感じただろうか。終盤でリカルドにポジションを譲るよう指示されたことで、ユウキは気持ちを抑えられなかったことだろう」と綴った後、チームの戦略に対して以下のように厳しい見解を示した。

「リカルドがソフトタイヤを履いていたとしても、その時点で入賞の可能性がほとんどなかったことを考えると、チームの決定は誤ったもののように思えた。チームは2023年を上昇気流に乗って終えたが、今週末のレースを見る限り、ファエンツァとビスターでのオフシーズン中の全ての変更は、チームにやや混乱を招き、後退をもたらしたようだ」
スポーツ専門サイト『sportskeeda』の採点は「6.5」だが、「ユウキのレース後の行動は、将来のレッドブル・ドライバーになる可能性を台無しにしてしまう危険性がある。こうした、感情の高まりによる冷静さの喪失は許されない。終盤の日本人ドライバーのパフォーマンスは印象に残るものではなかったが、このスティントは多くの人々の記憶に残るものとなっただろう」と、寸評は極めてネガティブなものとなっている。

最後に、採点ではなくランキングでの評価を下したのが、英国のモータースポーツ専門サイト『THE RACE』で、角田に対しては実際の結果を上回る「11位」。「予選での角田のパフォーマンスは素晴らしく、Q3進出を0.007秒差で逃したのは残念だった。彼はそれをターン8でのホイールスピンのせいだと考えているが、リカルドに対する0.149秒のアドバンテージは、彼らの相対的なペースを公平に反映していた」と予選での彼を称賛した上で、レースについては異なる評価を下した。

「レースでの戦略は角田にとって不利であり、最初のスティントでは10番手を走行していたにもかかわらず、ピットストップでアンダーカットによって失速していった。リカルドのソフトタイヤ選択の戦略により、終盤で順位を入れ替える状況が生まれ、そのフラストレーションが後の残念な振る舞いに繋がった。不必要な最後の騒動が、彼の評価を損なうことになってしまった」

構成●THE DIGEST編集部

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