科学で守る伝統の味 立子山の凍み豆腐 安定生産へ 福島市と福大連携 製法や特長データ分析 後継者確保に期待

生産者4軒で伝統を守っている立子山地区の凍み豆腐=昨年12月、三本杉食品

 福島市は、市内立子山地区に伝わる郷土食材「凍(し)み豆腐」を後世に受け継ぐため、福島大と連携して製法を科学的に分析する。乾燥させるのに適した気象などのデータを集める他、味を分析し、生産の安定化やブランド化に役立てる。近年は製造過程で温暖化への対応も求められており、良質な凍み豆腐を作る手法を探る。製法や特長をデータ化できれば、これまで生産者が感覚で身に付けてきた技が明確になり、意欲ある若者らの新規参入の手助けになると期待している。

 福島大地域未来デザインセンターの大越正弘特任教授を中心に、気象学や食品学を研究している教授が携わる。生産者の協力を得て豆腐の乾燥に最適な気温や湿度、気圧、日射、風などの条件を調べる。製造工程の映像化も検討している。立子山産の凍み豆腐の特長をつかむため、食味や固さなど味わいの面でも分析を進める。

 凍み豆腐作りは、厳冬期に屋外での作業となる。天候に応じてどのような作業内容にすればよいのかが具体的に分かれば、豆腐作りに興味を持った若者らも挑戦しやすい。大越特任教授は「100年後にこの技術をどう残すかが重要だ」と力を込める。消費の一層の拡大も大事になることから、将来的には学生と一緒にレシピ開発にも取り組みたいと意欲を示す。

 市と福島大はまず、生産者それぞれの考えや課題を聞く意見交換会を複数回開く方針だ。加藤泰広商工観光部長は「おいしい凍み豆腐を作るには手間がかかる。高齢化、温暖化などの課題を抱える今の時代に合った作り方を模索する」と話している。

 立子山地区の凍み豆腐生産は1945(昭和20)年ごろが最盛期で、85軒程度が手がけていた。高齢化や人手不足で生産者が減り、現在は4軒しかない。年末年始は雑煮などに入れるため注文が集中する。人々の健康志向の高まりによってタンパク質が多い食材として注目されていることもあって、近年は需要に供給が追い付いていないのが現状という。担い手の確保は大きな課題だ。

 福島大との調査・研究を生産者は歓迎する。父の代から約80年続く三本杉食品の代表三本杉正洋さん(86)は従業員12人を抱え、凍み豆腐作りに励んでいる。雨や雪が続くと品質に影響するため、「天候に左右されずに豆腐を乾燥させられる方法が見つかれば共有してもらいたい」と望む。

 清水食品は従業員を10人雇っているが、豆腐をつるすわらを編む作業は別の農家に委託している。自社の人手不足もあり、今季の生産量は10年前の4~5万束から半分程度の2万束弱に減った。社長の高根正武さん(76)は「需要があるのに出荷できないのは悔しい。地域の食文化を残すため、研究が後継者の確保につながれば」と願う。

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