渋谷区どう変わる?午後の全授業「探求学習」に 公立小中学校で新年度から

渋谷区では公立小中学校の時間割が新年度から大きく変わります。午後の授業が全て「探求学習」になるということです。

この探求学習というのはどういった学習なんでしょうか?

教育アドバイザー 清水章弘さん:「探求学習は子どもたちが自ら課題を見つけて、それを解決するために行動することで、子どもたちの自主性を育む学習のことです」

では「探求学習」では具体的にどんな授業を行っているのか。力を入れている渋谷区の小学校を取材しました。

記者:「午後の授業が始まりました。いま教壇に立っているのは先生…ではなく有名企業の社員です」

渋谷区笹塚の公立小学校で行われた探求学習で教壇に立つのは、民間企業で働くサラリーマンです。この日は小学6年生の児童たちに、プレゼンテーションとはどういうものなのかを教えました。

GMOインターネットグループ 成瀬允宣さん「話して相手に動いてもらう、人を動かすのがプレゼンのゴールだと私は考えている」

真剣なまなざしで話を聞く児童たちが、半年かけて探求学習で取り組んでいるのは「未来の小学校を作ろう」というテーマです。

児童:「ここがVR(仮想現実)なんです。VRのゴーグルで、ここから見る世界観がこれ」

児童たちは数人でグループを作り、1人に1台ずつ配られているタブレット端末で「マインクラフト」という専用ソフトを使って、未来の小学校の予想図を作成していきます。さらにこの日は最後の発表会に向けて「特別講師」の授業を参考に、プレゼンの資料作りにも取り組んでいました。

児童:「災害時に耐えられる造り。私たちは学校を浮かそうと考えて、実際にマインクラフトで作った写真をここに貼って、どういう仕組みなのかというのも写真で見せてから自分たちで話そうと」「マインクラフトでは表現できない部分をパワーポイントで、こういう風に、絶対確実に伝わるように分かりやすくというのを意識して」「算数などでは1+1=2と決まっているけど、これは自分で作っていける楽しさがあって、やりがいがある」

一方、授業をサポートする民間企業の成瀬さんは、授業を通じて見える子どもたちの成長に驚くばかりだと言います。

成瀬さん:「僕が驚くようなものを作ってくるんですね。そういった意味で言うとすごく侮れなくて。ただその上で思うのは、子どもたちの世界に閉じこもっちゃうことが多いので、そこに大人の視点というか社会人として教えることを教えられるように頑張っている」

全国に先駆けて進む、渋谷区の探求学習。取材した大澤記者が解説します。

大澤記者:「探求学習は正式な授業名としては「総合的な学習の時間」といいまして、26年前、1998年の学習指導要領の改訂により導入されました。現在は1年間で70コマを探求学習に当てるよう定められていますが、渋谷区はこれを新年度から約2倍の150コマ程度まで増やすことを決めました」

一つ気になる点が、探求学習を増やした分ほかの教科の時間が減りますが、それで国語や算数など基礎教科の学習は足りるのでしょうか?

大澤記者:「ここで使われるのが「授業時数特例制度」です。簡単に言いますと、基礎教科の決められた時間数の1割までを他の時間で学べるという制度です。例えば「運動会を成功させよう」という探求授業は体育の授業数として数えられ、「商店街の活性化」の学習で利用者数のグラフなどを扱えば算数の統計の授業としてカウントされるということです。こうした制度を利用して探求学習の時間を増やし、子どもたちの自主性を養う授業を増やそうとしているんです。

探求学習の課題は他にも教師側をどうサポートするかなどありますが、一番大切なのは子どもたちがいかに将来を生き抜くための力が身に付くかなので、そこを一番に考えて教育改革をすすめてほしいと思います」

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