テレワークの作業場や共用オフィスとして使える「コワーキングスペース」を拠点に他企業とつながり、事業の成長や地域の活性化を模索する取り組みが鹿児島県内で始まっている。新興企業の育成のほか、老舗企業が新事業を生み出す異業種交流の場として参加者に刺激を与えている。
県は1月から、企業連携強化を目的に県庁18階のコワーキングスペース「かごゆいテラス」でセミナーを開いている。食産業をテーマにこれまで4回開き、延べ100人ほどが参加、交流会も開いた。3月2日には県庁敷地内にテントサウナを設置して交流イベントを開き、参加企業が自社で作ったり取り扱ったりしている農林水産物や食品を持ち寄った。
村岡製茶(南九州市)の村岡美香さん(36)は「交流会をきっかけに取扱商品を増やしたいネット通販の新興企業と取引することになり、販路拡大につながった」と話す。
県新産業創出室によると、コワーキングスペースは1月末時点で県内に47カ所ある。2019年ごろから増え始め、新型コロナウイルス下でのリモートワークの普及もあって21、22年に大きく増加した。
19年に鹿児島市名山町にクリエーティブ産業創出拠点「マークメイザン」を開いた同市は、コワーキングスペースを活用して新興企業の育成や起業家のコミュニティー形成を支援している。
22年からは起業家が短い持ち時間で事業内容を発表するコンテストを実施。同市産業創出課の安永めぐみ課長は「他の人の発表が自身の事業のアイデアにつながることもある。場があることで交流が生まれ、市への相談もしやすくなっているようだ」と話す。
コワーキングスペースを活用するのはスタートアップだけではない。NTT西日本鹿児島支店は、鹿児島市呉服町の「HITTOBE」で、県内企業や自治体の若手職員が中心となる勉強会「鹿児島みらい共創プロジェクト」を月1回ほど開いている。これまでに県内約30社から約100人が参加した。
それぞれが自社事業に関連したテーマを持ち寄り、自社の強みや課題を発表。グループワークを通し、課題解決に向けた提案をする。これまでに、デジタル・トランスフォーメーション(DX)やeスポーツを通した地域振興、ダイバーシティの実現などをテーマに議論してきた。
当初は企業を対象にしていたが、最近は自治体職員や学生も参加する。勉強会を立ち上げたNTT西日本の峯崎華さん(28)は「10年、20年後に主力となって鹿児島のビジネスを動かしていく若手・中堅が、広い視野を身につけて鹿児島を活性化していければ」と力を込めた。