保育士3割出勤できず 休園4割、退職者も続出 奥能登4市町、県調査

  ●園児戻る「受け皿を」

 能登半島地震を受け、遠方に避難したり、転居したりして、奥能登2市2町の保育士206人のうち、約3割が出勤できない状況にあることが、石川県の調査で分かった。全23施設のうち4割に当たる9施設は休園が続き、退職するケースも相次ぐ。震災前と比べ、保育所を利用する園児の数は大幅に減っているが、地元に戻る住民が増えるとニーズが高まることが想定される。保育士不足が顕在化すれば、奥能登の少子化に拍車が掛かる可能性がある。

 奥能登の保育士の勤務実態が明らかになるのは、地震後初めて。

 穴水町川島の平和こども園では保育補助の職員も含め、震災後に3人が退職した。「長い間、お世話になりました。こんな形でお別れだなんて…」。勤続37年のベテラン女性保育士は2月半ばに辞職を申し出た。町内の自宅が大規模半壊と判定されて取り壊すため、町外へ引っ越すという。

 この園では地震前から人手の確保に苦労し、求人を出しても応募がなかった。受け入れ人数を絞らざるを得ず、新年度は入園希望者10人のうち2人を断った。

 県の調査では、特に輪島市で勤務できない保育士が多く、2月20日時点で91人の半数が復帰できていない。11ある市内の施設で、園児を受け入れているのは5施設。残る6カ所は断水や園舎の損壊で通園再開の見通しが不透明なままだ。

 このため、再開した施設では従来通っていた園児に加え、一時預かりとして他の園の子どもも受け入れている。輪島市河井町のかわい保育園では、市内の小学校で授業が始まった2月から利用が増え、現在は1日50人ほどが登園。預かる子が多い日は他の施設に応援を頼んで対応しているという。

 県は今後、奥能登以外から保育士の応援派遣が得られるシステムの構築を国に働き掛ける予定だ。

 地震前に4市町にいた園児1119人の一部は地元に戻らないことも想定されるが、県の担当者は、インフラ復旧や仮設住宅への入居に伴い保育利用は増えるとし「受け皿を準備するため、必要な対策を講じていく」と話した。

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