「卒業式は体育館で」避難者快諾 能都中、場所明け渡す

卒業式の会場となる体育館から避難者の荷物などを運び出す生徒や保護者、ボランティア=6日午後1時40分、能登町能都中

  ●後輩の門出に 9日開催

  ●規模縮小せず、保護者・在校生出席

 いつもの体育館で、いつもの卒業式をしたい。子どもたちのそんな思いを避難者が快く受け入れた。能登半島地震を受け避難所となっている能登町能都中で6日、第1体育館に身を寄せる40人の「引っ越し」があった。これにより、当初は規模を縮小し、出席者も限定する予定だった式は、従来通り体育館を使っての開催が可能に。避難する人は「自分たちもOB。後輩の門出はしっかり祝ってほしい」と寝床を移し、9日の式にも出席して3年生49人を送り出す。

 同校の卒業式は2012年に新校舎が完成して以降、第1体育館で行われてきた。第2体育館もあるが、ステージがなく式典などには使われてない。

 元日に発生した地震でも大きな被害がなかった第1体育館は、町の指定避難所となり、多くの人の生活の場に。現在も40人が暮らし、授業や部活動では使用されていない。

 このため、同校では卒業式を校内のランチルームで行うことをいったん決定。手狭であることから、保護者の出席は3年生1人につき2人まで、約70人の在校生は各教室でリモート中継の様子を見守ることになっていた。

 しかし、生徒から「いつもの第1体育館で式をできないか」「目の前で卒業生に感謝を伝えたい」などの意見が上がったという。

 生徒の意向を受け、PTA会長の吉村昌央さん(54)らが学校や避難所を運営する町、町教委と協議。避難している人に、第1体育館から約100メートル離れた第2体育館に移ってほしいこと、荷物の運搬はPTAが担うことを伝えたところ了解が得られた。

 6日の「引っ越し」は、保護者と地元のボランティアに加え、1、2年生約60人が協力を買って出た。

 避難生活を続ける70代無職男性は「式にはたくさんの人が出席できた方がいいから喜んで協力したい。OBでもあり、後輩を祝いたい」と話した。

 生徒会長の赤坂希咲(きさき)さん(2年)は「避難者の方には申し訳なかったが、在校生も出席できることになってうれしい。皆さんに感謝している」と笑顔を見せ、先輩たちには震災前と同じように厳粛に節目を迎えてほしいとした。

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