●「甘い気持ちあった」
志賀町発注工事の入札を巡る贈収賄事件で、加重収賄、官製談合防止法違反などの罪に問われた前町長、小泉勝被告(57)=同町町(まち)=の第2回公判は6日、金沢地裁(野村充裁判長)であった。小泉被告は被告人質問で「少額ならという甘い気持ちで賄賂を受け取った」と述べ、謝罪した。検察側は懲役3年、追徴金110万円を求刑、弁護側は執行猶予付き判決を求めて結審した。判決は4月17日。
小泉被告はスーツ姿で出廷した。被告人質問で検察側は、小泉被告が町長に初当選した約2年前に町内の談合事件で複数業者が摘発されたことに触れ、「クリーンな町政への期待を受けて当選したのに、町民を裏切った」と指摘。これに対し小泉被告は「しっかりやろうという思いがあったが、最終的には選挙で応援してもらおうという、心の弱いところが出た」と語った。
検察側は論告で、被告は最低制限価格の予測が困難な状況を作った上、複数の業者に価格を教えて便宜を図り、対価として賄賂を受
け取っていたとした。「首長として言語道断な犯行であり、行政や入札制度の公正に対する信頼を失墜させた」と非難した。
弁護側は最終弁論で、賄賂は高額ではなく、被告から要求したわけではないと主張。「被告は真摯(しんし)に反省し、逮捕後は一貫して事実関係を認めて捜査に協力してきた」と訴えた。
共犯として逮捕された後、不起訴処分(起訴猶予)となった小泉被告の妻(57)は証人として出廷。なぜ夫の不正を止められなかったのか問われると、「町長という立場であり、意見することに遠慮があった」と述べ、今後は監督していくと誓った。
この日は、2022年7月の道路工事の入札で、西田組(同町)社長に最低制限価格を伝え、現金40万円を受け取ったとされる事件の審理も行われ、小泉被告は起訴内容を認めた。
起訴状によると、小泉被告は22年7月~23年7月に行われた町発注の公共工事の入札3件に関し、業者側に最低制限価格を教え、落札させた謝礼として3社から計110万円を受け取ったとされる。
●被告人質問やりとり要旨
【弁護側】
―業者に最低制限価格を漏らしたのは、親戚同様に付き合っていた知人の依頼が始まりだった。
「そうです」
―町長1期目のときだった。
「はい」
―知人の供述調書では、(小泉被告が)最低制限価格を教えるようになった当初からお金をもらっていたという内容だった。
「教えるようになったのは町長になって少ししてから。当初は謝礼を受け取っていなかった」
―お金を受け取るようになったのはいつか。
「2期目だったと思う」
―最低制限価格は、職員が持ってくる計算表を元に、あなたがランダムに決めていた。その方法は自分で編み出したのか。
「違う。前(町長)からそのように決めていたと思う」
―賄賂を要求したこと、賄賂の金額を決めたことはあるか。
「決してありません」
―捜査を知ったのはいつか。
「(昨年の)7月の後半だったと思う。警察が業者に聞き取りをしていると聞いた」
―どう思ったか。
「大変なことになると思った」
―警察が来たらどうするつもりだったのか。
「全てを話すつもりだった。正直に話すことがけじめだと思っていた」
―辞職については。
「辞職は最初からしたいと思っていた。弁護士には逮捕前、日付を書かずに辞職願を渡していた」
―逮捕までの3カ月間、どうだったか。
「内心、ハラハラしていた」
―政治の世界に未練はあるか。
「ありません」
【検察側】
―あなたが言う知人とは誰か。
「知人です。親戚ではないが、親戚のような、きょうだいのような関係の人。この知人に最低制限価格を教えてくれと言われ、仕方なく教えた。何度も何度も頼まれたので」
―2009年に当選する少し前に、志賀町の土木業者が談合事件で検挙された。クリーンな町になることを期待して(被告が)町長に選ばれた。
「しっかりやろうという思いがあった。最終的には知人に選挙で応援してもらおうという心の弱いところが出た」
―(当初は)知り合いの議員を通して最低制限価格を教えていた。議員や業者の名前、何社かは言いたくないという気持ちは今も同じか。
「自分のやったことは反省しているが、亡くなった人もいる。そうした人の名誉を害することはしたくない」
【裁判官】
―なぜ、お金をもらうことになったのか。
「最初は断っていたが、知人に『少額だから』と言われ、甘い気持ちがあった」
―町民に言いたいことはあるか。
「志賀の名を汚したことを反省している。一町民として、志賀のために一生懸命やることを約束する。自分を見ていてください」