水道管の耐震化、大分県内は37.6% 石川県と同じ低水準、市町村で大きな差も【大分県】

基幹水路を耐震管に入れ替える工事現場=昨年6月、大分市曲(大分市上下水道局提供)
市町村別の基幹管路耐震適合率

 能登半島地震は発生から2カ月が過ぎても各地で断水が続き、被災者の生活再建に支障を及ぼしている。大分県内は主要な水道管の耐震適合率が石川県とほぼ同じで4割に満たず、各市町村の耐震化にも大きな地域差がある。発生が予想される南海トラフ地震などの大地震に対して脆弱(ぜいじゃく)性が懸念され、大分県は「水の有無は災害後の生活に関わる重大な問題」として対策を促したい考えだ。

 厚生労働省によると、基幹的な水道管のうち耐震性のある管路の割合を示す「耐震適合率」は、2021年度末時点で全国平均41.2%。石川県は36.8%、大分県は37.6%で共に平均より低い。同省は28年度末までに全国で60%以上を目標に掲げている。

 県内の市町村別では玖珠町が85.4%と最高。02年ごろから上水道の供給エリアを広げた際に耐震性のある管を使った。自治体間のばらつきが大きく、最も低い宇佐市は10.6%にとどまっている。

 大分市は70%。東日本大震災後の13年ごろから本格的に耐震化に取り組んだ。「過去の災害を踏まえ、いかに断水を抑えるか、早く復旧できるかが重要だと考えている」と水道整備課。今後約25年間で100%を目指す。

 ただ、人口減少で水道事業の経営が厳しくなる中、耐震化は多額の費用がかかり負担が大きい。各自治体によると、管の耐震化だけを目的に工事することは少なく、漏水などが起きた際に耐震性のある管に交換するケースが多いという。

 宇佐市は基幹管路の総延長が66キロに及ぶ。約20年前、浄水場の整備に合わせて約500メートルのみ耐震性の高い管を入れた。上下水道課は「小さい配水管などは少しずつ入れ替えているが、基幹管路は大きな予算がかかる」と説明する。

 杵築市は昨年、老朽化した杵築浄水場(同市本庄)の設備更新と耐震化に着手し、水道料金の値上げにも踏み切った。上下水道課は「水道施設の整備・改修に加え、災害へ備えるためには継続的に資金を確保する必要がある」と述べた。

 市町村の水道事業に関する業務を所管する県環境保全課によると、耐震化工事に当たっては国の補助金があるものの、適用には相当規模の設備投資が必要で補助率も低いという。

 23~27年度に中津市と宇佐市が実施する耐震化事業は、浄水場などを含めて計約53億円の事業費のうち、国からの交付は約11億円にとどまる。

 松原輝博課長補佐(50)は「補助要件を満たすことができない市町村も多く、使いにくい。国に見直しを求め、耐震化への取り組みを進めたい」と話した。

<メモ>

 国などによると、能登半島地震で石川県内は最大で約6万8千戸が断水した。2月末時点で、輪島市や珠洲市など被害の大きかった地域を中心に約2万戸の断水が続いている。

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