“解除”の里親、県を提訴 児相対応は「裁量権逸脱」 県側、棄却求め争う構え 宇都宮地裁

宇都宮地裁

 約1年8カ月にわたり養育していた小学1年の里子の里親委託を児童相談所(児相)が一方的に解除したのは違法で精神的苦痛を受けたとして、栃木県内在住の夫妻が栃木県に計600万円の損害賠償を求めた訴訟の第1回口頭弁論が6日、宇都宮地裁(浅岡千香子(あさおかちかこ)裁判長)で開かれた。原告側は児相の対応を「裁量権の範囲の逸脱」と主張。県側は請求棄却を求める答弁書を提出し、争う構えをみせた。

 訴状などによると、夫妻は2021年10月、児相から女児=当時(5)=の里親委託を受けた。女児には他人と適切な関係を築きづらい愛着障害や自閉症があったが、夫妻との交流を通じて愛情や信頼を形成していた。妻は児相に養育の不安などをその都度相談し、助言や指導を受けてきた。

 23年6月上旬の夜、寝ずに遊びたがる女児が妻を蹴り続けたため、夫が女児の両頬を両手で挟む形で「パンパン」とたたいて叱った。翌日、妻が児相に夫の言動などを報告した。児相はその日のうちに登校していた女児を一時保護し、夫妻に「前日の事は虐待」などと説明。その後、夫妻への里親委託を解除した。

 原告側は、児相の対応は裁量権を逸脱した違法なものと主張。代理人弁護士は「裁判で児相の判断に問題があると明らかにし、里親の再委託に結びつけていきたい」としている。

 一方、県は「里親側から養育が難しいなど負担感の表明が以前からあり、児相は丁寧に対応していた。総合的に判断して(里親委託を)措置解除した」と説明。具体的な主張は今後、明らかにしていくという。

 里親制度は、さまざまな事情で育てられない実親に代わり一時的に子どもを預かって養育する制度。県によると、22年度末時点で県内で登録された里親は366世帯、委託された子どもは116人。ここ数年はいずれも増加傾向にある。

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