都営地下鉄ホームドア全駅に コスト740分の1で実現したアイデアとは

東京都は2月、転落事故防止などを目的に、都営地下鉄すべての駅でホームドアの設置を完了させました。実現の裏には設置の際のコストを740分の1まで抑えたあるアイデアがありました。

2月20日、都営浅草線の一部の駅にホームドアが設置されました。これにより都営地下鉄の全ての駅に整備されたことになります。

ホームドアの普及率はJRや私鉄全体で4割程度に留まっているなか、都営地下鉄は主要路線としては東急電鉄に次いで2例目となる完全ホームドア化を実現させました。そこには大きな課題をクリアするひらめきが…。

東京都交通局 岡本さん:「これは使えるんじゃないかとひらめいた。20億円ぐらいが270万円で済んだ」

国内で初めてホームドアが取り入れられたのは、1970年の大阪万博で会場内を走るモノレールでした。都内では1991年に開業した当時の営団地下鉄南北線で初めて整備され、自動運転を実施する兼ね合いから、ドアの形は安全のため天井まで高さがあるものが採用されています。その後、そのほかの鉄道各社では取り付けのしやすさなどから胸あたりまでの高さが一般的となりました。

そして2006年、公共施設の安全性向上を求める「バリアフリー法」施行をきっかけに、都は都営地下鉄4線全ての106駅でホームドアの設置に向け本格始動しました。それから18年、2月の全駅設置に大きく貢献したのが…

東京都交通局 岡本さん:「これがQRコードを読み取るカメラになります」

天井に設置されたカメラと車両の窓に張られた特殊なQRコードです。今までのホームドアは車両の動きとドアの開閉を連動するために、億単位の費用をかけてドアと車両の両方にセンサーを設置していました。この従来の方式からQRコードをカメラで読み取る形にしたことで、大幅なコストカットに成功したということです。

東京都交通局 岡本さん:「20億円ぐらいかかるよっていう試算だったんですけど、それが今(QRコードの)シール代ということで270万円で済んだということになります」

都営地下鉄でホームドアが一番最後に設置された都営浅草線は、東京都に加え京急、京成、北総、芝山鉄道と異なる鉄道事業者5社が相互直通運転を行っています。今回のQRコード装置の開発によって、本来、ホームドア整備に発生する費用約20億円を740分の1となる270万円まで抑えられた結果、各事業者側の負担が減り、駅への設置が加速したということです。

東京都交通局 岡本さん:「QRコードのシステムそのものについてはどこの事業者でも使えるという形で公開していますので、(課題を)少しづつでも解決しながらホームドアを推進していきたい」

東京都はQRコードのシステムを他社にも無償提供していて、既に京急電鉄や小田急電鉄の一部の駅で採用されています。

都営地下鉄各線では設置後転落事故がほぼなくなるなど、駅の安全性向上につながるホームドア。その他の路線でも全駅設置に向け整備が進められています。

都営地下鉄が全駅の設置を完了させたホームドアについて、都内の鉄道各線の状況をまとめました。都が調査した去年3月末の数値では、都営地下鉄や東京メトロといった地下鉄は高い設置率を示していますが、その一方でJRやその他私鉄各線の駅ではホームドアの設置率は4割に届いていません。

このような設置率に差が出てしまう理由について、交通政策に詳しい日比野教授は、JRや私鉄は地下鉄に比べて古い駅が多く、ホームの広さや強度が設置に充分でない箇所がある点、列車の本数や乗り入れ車両が多く運行間隔を調整する必要がある点、また利用者数が少ない鉄道ではコストの問題などを背景にホームドア設置率が低いと指摘しています。

その上で今後の設置率について、労働人口の減少が進み自動運転やワンマン運転が増えれば、安全上の問題などから、重要性が増すホームドアを技術の進歩やコストカットなどもふまえ、効率よく設置させていく必要があるとしています。

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