日銀財務への配慮から必要な政策妨げられるとは考えず=植田総裁

Takahiko Wada Shinichi Uchida

[東京 7日 ロイター] - 日銀の植田和男総裁は7日の参院予算委員会で、日銀財務への配慮から必要な政策の遂行が妨げられるとは考えていないと述べた。その上で、今後、賃金と物価の好循環の強まりを確認し2%物価目標の持続的・安定的な実現が見通せる状況に至れば、マイナス金利政策やイールドカーブ・コントロール(YCC)の枠組みなどさまざまな大規模緩和策の修正を検討していくことになると話した。藤巻健史委員(維教)の質問に答えた。

植田総裁は、今後YCCの枠組みを撤廃するにしても残すにしても「長期国債の買い入れは続くことになる」と述べた。見直しの前後で不連続な動きが生じることがないよう適切に対応する方針だとした。

正木一博企画局長は、2023年度上半期末(10年金利は0.76%)のイールドカーブが全体的にパラレルに上昇したと仮定すると、保有国債の評価損の拡大幅は1%上昇で29兆円、3%で77兆円、5%で114兆円、10%で180兆円になるとの試算を明らかにした。

23年度上半期末の保有国債の評価損は10兆5000億円だが、会計基準として償却原価法を採用していることから日銀の期間損益には影響がない。植田総裁は「一部の例外を除いて(これまで)国債は売却していない」とし、償却原価法の採用が適切だと説明。その上で、財務の健全性にも留意しつつ、適切な政策運営に努めていく方針だと述べた。

(和田崇彦、内田慎一 編集:田中志保)

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