一般開放10月に延期 黒部宇奈月キャニオンルート

キャニオンルートを走る蓄電池機関車=昨年9月、黒部市内

  ●トロッコ復旧に合わせ

 富山県は7日、6月30日に予定していた黒部宇奈月キャニオンルートの一般開放を10月1日ごろに延期すると発表した。能登半島地震の影響で、同ルートと宇奈月温泉を結ぶ黒部峡谷鉄道の鐘釣橋が損傷し、鉄道の全線開通が10月に延期されたため。北陸新幹線敦賀延伸後の観光の目玉として期待が高まっていただけに、県や旅行関係者にとって痛手となる。

 黒部峡谷鉄道(黒部市)は7日、能登半島地震で落石被害を受けた鐘釣橋の復旧工事のため、宇奈月―欅平間(全長20.1キロ)を走るトロッコ電車の全線開通を延期すると発表した。10月1日を目標に復旧工事を進める。

 同社によると、鐘釣橋は猫又―鐘釣間にあり、地震で東鐘釣山からの落石が直撃し、橋桁や枕木が損傷した。4月下旬の雪解け後、東鐘釣山の落石防止対策工事を実施し、鐘釣橋の部材交換を行う。

 全線開通が10月にずれ込むのは初めて。例年は5月上旬に全線で営業を始める。今年は4月20日ごろから宇奈月―猫又間で部分運行を行う。

 黒部宇奈月キャニオンルートは、黒部峡谷鉄道の欅平駅と黒部ダムを結ぶ約18キロの工事用トンネル。「高熱隧道(ずいどう)」と呼ばれる岩盤温度の高い区間や高低差200メートルの竪坑(たてこう)エレベーターなどがあり、難工事に挑んだ電源開発の歴史を体感できる。

 県は一般開放に合わせ、旅行商品をつくった。四つの宿泊プランがあり、当初1月29日に販売予定だったが、地震で延期していた。県によると、6月30日から11月29日までに最大8140人を受け入れる予定だったが、延期によって最大3千人にとどまる。売り上げへの影響は6億円以上に上るという。7月上旬までに販売を開始する。

 黒部峡谷鉄道の工事の進み具合によっては一般開放がさらに遅れる可能性もあるという。県の担当者は「延期は残念だが、一般開放までの間、内容をさらに充実させ、満足度が上がるような商品にしたい」と話した。

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