千枚田、60枚から再生 「復興の象徴に」3月末に修復着手

亀裂が入った棚田の修復について話し合う白米千枚田愛耕会の会員=5日午前11時、輪島市の白米千枚田

 能登半島地震で甚大な被害を受けた輪島市の国名勝「白米(しろよね)千枚田」で5月、約60枚の棚田で田植えができる見通しとなった。地元ボランティア団体が5日、現地で調査を行い、耕作可能と判断した。今月末から田の修復を始め、さらに作付面積が広がる可能性もある。関係者が「元気な田んぼを取り戻す」と再生を誓うとともに、市は千枚田を復興の象徴としたい考えで、作業を後押しする。

  ●地元団体が調査

 千枚田は主に地元の「白米千枚田愛耕会(あいこうかい)」が管理し、風光明媚(めいび)な景観は、能登を代表する観光名所となっている。

 元日の地震で、棚田に無数の大きなひびが入ったほか、水源の用水路も崩壊。田に水が引けず、当初は今春の作付けは難しいとの見通しだったが、応急復旧工事により、4月初旬に通水のめどが立った。

 ただ、深さ50センチ以上に達する亀裂が生じたり、地盤が傾いたりした田もある。上段の田んぼに水が張ると、下の方に水が流れる仕組みになっているため、耕作できる箇所は限られてくる。さらに愛耕会の会員も被災しており、耕作者の確保も課題となっている。

 5日は会員10人が集まって午前10時から約1時間半かけて歩いて見回り、耕作ができそうな田んぼを確認し、亀裂の直し方を話し合った。会員の大半が市外で避難生活を送っており、会として調査を行うのは初めて。会員からは「わずかだが光が見えてきた」。「やってやるぞと、気持ちが高ぶった」との声が上がった。

 3月末から修復に取り掛かり、4月から田起こしの作業に入る。愛耕会の白尾友一代表(60)は「みんなで力を合わせて一歩一歩、一枚一枚元の姿に戻していく」と力を込めた。

  ●道の駅を仮宿舎に 輪島市が作業後押し

 輪島市は千枚田に隣接する道の駅千枚田ポケットパークを所有しており、営業が再開するまで、施設を愛耕会の仮宿舎として提供する。市外から駆け付ける会員も多く、効率良く作業を進めてもらい、千枚田の復興につなげる。

 市内ではインフラの復旧が遅れ、生活再建の見通しが立っていない市民も多い。ただ、市の担当者は「生活再建を最優先で取り組んでいるが、復興の希望の光となるべく千枚田の耕作も応援する」と話した。

 ★白米千枚田(しろよねせんまいだ) 輪島市白米町にある海に面した急勾配の斜面に広がる1004枚の棚田の総称。国名勝に指定され、2011年に全国で初めて認定された世界農業遺産「能登の里山里海」のシンボルとなっている。オーナー制度を採用して田植えや稲刈りには全国から多くの人が駆け付けている。

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