住む?貸す?売る?住まいの「終活」元気なうちに 空き家問題、早めの対策訴え

「負動産になる前に対策をしましょう」と呼びかける畑インストラクター(左)と畑理事長=南丹市日吉町・森の学舎五ケ荘

 社会問題になっている空き家の増加。京都中央古民家再生協会(京都府亀岡市)の畑哲也理事長(55)と、住教育推進機構京都支部(同)の畑正枝・住教育インストラクター(50)が京都府南丹市内で講演し「所有者が元気なうちに家族で話し合い、住まいも『終活』を」と早めの対策を訴えた。

 畑インストラクターは、空き家について「1年以上住んでいないか、使われていない家」と国が示す基準を紹介。生活スタイルの多様化で1世代1軒の家を建てるようになったとし「早いか遅いかだけで、3世代同居であっても空き家は人ごとではない」と力を込めた。

 空き家を放置すると、建物の傷みが早くなり、不法侵入や放火の恐れが高まるなど、所有者の不利益になると指摘。さらに、まちが荒れて地域の住宅価値が下がったり、市町村の税収が減って水道などライフラインの維持管理が難しくなったりして「地域の課題でもある」との視点を示した。

 一方、畑理事長は統計データや最近の法改正を解説した。住宅総数に対する空き家率が30%を超えると自治体の財政が破綻するともいわれているとし、2018年の総務省調査で全国平均の空き家率13.6%に対して南丹市は19.4%に上ると説明した。

 今年4月から相続不動産の登記義務化が始まり、正当な理由がないのに登記しなければ10万円以下の過料が課されるなど「空き家の活用を進め、管理不全に対して厳しくしていくのが国の方向性だ」と話した。

 空き家の所有者になったら、どうすればよいのか。畑インストラクターは「利活用を考えているうちに、劣化して住めなくなるケースがある。売れない、活用できない『負動産』になってしまう」と早期対応の必要性を訴えた。利活用が可能か解体すべきかは、木造住宅簡易鑑定士による調査が利用できることを紹介した。

 特に「空き家予備軍」の1人暮らしや夫婦だけの高齢世帯は、終活として「あらかじめ自宅の相続人を決め、住むのか、貸すのか、売るのか、どうしてほしいのかを家族で話し合ってほしい」と求めた。「遺産狙いと思われるのを気にして子どもから持ち出しにくいこともあるので、親から切り出してみてはどうか」と提案した。

 講演会は2月23日、南丹市日吉町の森の学舎五ケ荘で住民組織「住みよいむらづくり協議会」が開いた。

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