ILCは「各国協働への発展が重要」 仙台でKEK山内機構長が講演

ILCを巡る最新動向を説明する山内正則機構長

 【仙台支社】東北ILC(国際リニアコライダー)推進協議会は7日、仙台市内で講演会を開いた。高エネルギー加速器研究機構(KEK、茨城県つくば市)の山内正則機構長が、プロジェクトの意義や実現に向けた最新動向を説明した。

 オンラインを含む約120人が参加。「素粒子物理学の発展とILC」と題して講演した山内氏は、発見から年数の浅い素粒子・ヒッグス粒子を量産するファクトリー(工場)が世界の4カ所で検討されているとし「ILCは比較的コストが低く、技術的にも実現可能性が高い」と強調した。

 近年、実現に向けて世界の研究機関との協力体制が整いつつあるが「一つの研究所や国が大部分を負担するのではなく、各国が協働して進めるグローバルプロジェクトに発展させることが今後重要になる。各国の理解を得られるよう働きかける努力が欠かせない」と指摘した。

 山内氏は2015年機構長に就任後、世界各国の研究所との連携構築や技術開発などILCプロジェクトをけん引し、今月で退任する。後任には、東京大素粒子物理学国際研究センター長の浅井祥仁氏が就く。

 ILCは地下トンネルに直線型加速器(初期延長約20キロ)を設置し、宇宙創成の謎に迫る国際プロジェクト。万物に質量を与えるとされるヒッグス粒子の精密研究が大きなテーマの一つとなる。北上山地(北上高地)が候補地とされ、日本政府が誘致の可否を検討している。

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