社説:国際女性デー 「ガラスの天井」風穴を

 きょうは国連が定める「国際女性デー」である。女性の差別をなくし、地位向上について改めて考える契機としたい。

 「初の女性トップ」という話題が相次いでいる。

 日弁連の会長に4月から就任する渕上玲子氏は、法曹三者(弁護士、検察官、裁判官)で初の女性リーダーとなる。日本航空社長には客室乗務員の出身者が就く。海上自衛隊では最も階級が高い「海将」に昇任し、地方総監に起用された。政府の南極観測隊隊長にも大学教授が選ばれた。

 男性中心だった世界で女性が風穴をあけ、活躍の場を広げている。進む道に悩む女性たちの道標になってほしい。

 だが、日本では初のトップがニュースになるほど、いまだ指導的立場に立つ女性が少ない。就業率は上がっているにもかかわらず、働きにくい環境と、性差を理由に女性の昇進を阻む見えない障壁「ガラスの天井」がある。

 厚生労働省によると、課長級以上の管理職に占める女性の割合は2022年度で約13%。先進国でも最低水準だ。

 京都、滋賀に本社を置く東証プライム上場の大企業では、女性管理職比率が10%に満たない企業が8割以上を占める。

 共同通信の調査では、主要企業で男性社員が取得した子ども1人当たりの平均育休取得期間は、3カ月未満だった企業が9割近くに上った。女性は1年以上が6割近くで、その開きは大きい。女性が育児の中心的役割を担う実態が顕著に表れている。復職後のキャリアのハンディーといえよう。

 男性の長時間労働を見直すのはもちろん、共同での育児を支える制度を整える必要がある。家庭での関わりについて、父親が気軽に学ぶ機会や集う場も考えたい。

 安心して女性が復職できるような支援も不可欠だ。育休や産休が昇進にマイナスにならない評価制度が要る。退職者の再雇用制度を整える企業もある。

 分割取得が2回までという育休の枠組みは、もっと柔軟にできないか。家庭環境や時期によっても、仕事と育児の比重は変わりうる。晩婚化で育児と介護のダブルケアを担う家庭も少なくない。

 人口減少が進む中、さらなる女性の活躍は日本社会にとってなくてはならない。性差による「ゆがみ」の是正を通じ、多様な人たちがやりがいを持って活躍できる柔軟な労働・生活環境を、国や企業は整えねばならない。

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