【加藤裕子さん(錦屋酒店/女将)】“新潟の地酒文化と土地の魅力を伝えたい”


【プロフィール】
加藤 裕子(かとう ひろこ):新潟市中央区出身。祖父の代から続く酒屋で生まれ育った新潟っ子。15年間教員として県内で勤務した後、夫とともに店を継ぐ。県内の酒蔵と直接取引を基本に、小さな酒蔵まで幅広く取り扱う。新潟の地酒文化とともに、新潟の魅力を発信したいと活動中。


ガタチラスタッフ:『新潟人191人目は、「錦屋酒店」の加藤裕子さんです!昭和26年創業の老舗酒店の女将として、日本酒と新潟の魅力を発信している加藤さんに、お店を継いだきっかけやこれからの目標についてお聞きしました!素敵な笑顔で取材に応じてくださり、ありがとうございました!』

教員生活から酒屋の女将へ

──前職は教員だったのですね!

加藤さん:新潟市の大学を卒業後、教員として上越市や佐渡市、新潟市で15年ほど勤務していました。夫も転勤のある仕事で、お互い佐渡にいる時に出会ったんです。

──「錦屋酒店」を継ぐきっかけは何だったのですか?

加藤さん:夫が新潟市に異動するタイミングで、私も一緒に戻りました。たまたま店の手伝いをした時に、夫は“酒屋の面白さや可能性”を感じたそうで、先に仕事を退職して、本格的に手伝うようになったんです。

──旦那さんが手伝い始めたことがきっかけだったのですね!

加藤さん:ちょうど私も産休だったので、店を手伝っていました。県外の方が「新潟って意外と都会だね」「おいしいものがたくさんあるね」と言ってくださって、その時に「もっと魅力を発信すれば新潟が盛り上がるんじゃないか」と感じました。教員時代の“街探検をする授業”で、新潟の街の魅力を発信する楽しさを感じたこともきっかけとなり、退職して家業を継ぎました。

──昭和26年創業と歴史のあるお店ですよね。

加藤さん:祖父が始めたお店なのですが、昔は酒蔵の子弟じゃないと酒屋になれなかったんです。酒蔵の次男だった祖父は本町で酒売りを始めて、昭和33年の現新潟駅の開業とともにこの地に店を構えました。

──加藤さんにとって日本酒は身近な存在だったんですね。

加藤さん:小さい頃から配達に付いて行ったりしていました。当時は日本酒以外もたくさん取り扱っていて、日本酒に特化したのは、酒販免許が自由化されてからです。

奥深い新潟の地酒の世界

──地酒に特化してもこれだけの種類があるんですね。

加藤さん:県内の酒蔵は90弱と言われていますが、当店ではその内の30弱を取り扱っています。それぞれの蔵と直接取引をしているので、蔵ごとのアイテム数が多いのが特徴ですね。お土産屋さんでは扱っていないお酒も多いです。

──直接取引だからこそ伝えられる魅力もありますよね!

加藤さん:蔵元との直接取引は、“相思相愛でないと成立しない”ものです。お客様も地酒に対する強い想いを持って来てくださるので、私たちもその想いに応える販売や伝え方をしなければいけないと思います。当店が「これぞ」と思うお酒をお伝えして、気に入っていただけたら嬉しいですね。

──もともと日本酒がお好きだったんですか?

加藤さん:店を継いでから日本酒をよく飲むようになりましたね。勉強の為に県内外の地酒をいろいろ飲んでいたので、冷蔵庫にも常にストックがある状態でした。エンゲル係数ならぬ酒係数が高い家です(笑)。

──県外からのお客様が多いですか?

加藤さん:県内の方はもちろん、県外から出張や旅行で来られる方も多いですね。「取引先の方から紹介してもらった」と言って来てくださいます。近隣にはホテルも多いので、通りすがりにお土産として購入される方もいらっしゃいますね。

──店内のPOPが印象的です!

加藤さん:お客様がお酒を選ぶ時に役立てばいいなと思い、酒蔵からいただいたお酒に関する情報をPOPで分かるように作っています。POPを見てお酒を選んでくださるお客様も少なくないですね。取引している飲食店さんのご紹介もしていて、試飲をしながら飲食店の情報も目に入るようにしています。

──試飲コーナーはコイン式なのですね!

加藤さん:昔はグラスに直接注ぐ形だったのですが、コロナ禍をきっかけに非接触型のコイン式にリニューアルしました。窒素充填をしてくれるので、いつでもフレッシュな状態でお酒が楽しめます!タイプが異なる約10種類を用意しているので、ぜひ気軽に利用していただきたいです!

──試飲があるとより入りやすいですね!

加藤さん:そうですね。最近では試飲目的で来られる方も多くて嬉しいです。もう少し入りやすい雰囲気を作っていきたいので、店頭の作り方も考えています。

──大切にしていることは何ですか?

加藤さん:“お客様が何を求めているか”ですね。お客様にヒアリングしながら提案できるのが、お土産屋との差別化だと考えています。お客様の目的に応じておすすめすれば、そのお酒がただのお酒ではなく、“魂がこもったもの”になって大切にしてもらえると思います。

地酒は「自然の恵み」なんです。神様のおかげでお米ができて、酒蔵の人の努力でお酒ができる。それをお客様にも感じていただけるように、スタッフ全員が同じ意識で接客しています。

日本酒好きを増やしたい

──お客様との印象に残るエピソードを教えてください!

加藤さん:県外にもリピーターの方が多くいらっしゃるのがとても嬉しいですね。「毎月お酒をおまかせで送ってください」というお客様もいて、信頼関係が築けていると感じますね。「以前飲んだお酒がよかったから」と再訪してくださる方もいて、それも嬉しいことです。

──若い世代のお客様も来られますか?

加藤さん:最近は若い方も増えてきました!昔と比べて、日本酒の生産量も減っていますし、アルコールを飲まない人も増えていますが、お酒が飲みたい時の選択肢の一つとして、“気軽に日本酒を飲んでもらえたら嬉しい”ですね。

──日本酒をよく知らない方におすすめの飲み方はありますか?

加藤さん:日本酒は“甘さや香り”がある方が分かりやすいと思います。低アルコールのお酒もありますが、日本酒を飲む時は必ず「やわらぎ水」も一緒に飲んでくださいとお伝えしています。年上の人とお酒を飲む場が減っている昨今、おいしい食事と一緒に、悪酔いしない正しいお酒の飲み方も伝えていきたいです。

──新潟駅がリニューアルしますが、期待することはありますか?

加藤さん:「新潟に新しい街ができる」という感覚です。古町、万代と人が集まる場所も移り変わってきたわけですが、“若い人たちが新潟駅で何かしたい”ということが増えると思います。新潟駅が良い導線になって、どこかへ行く出発点になるといいですね。それを私たち商店街も一緒になって取り組み、街を繋げていきたいです。

──最後に、今後挑戦したいことを教えてください!

加藤さん:「日本酒を飲みたい」と思う若い人が増える戦略を考えていきたいです。日本酒には様々な味わいがあるので、その魅力を伝えていきたいですね。そして、日本酒だけでなく、“新潟の魅力やおすすめスポットなどをお伝えできる観光案内所的な役割”になれたらと思います。「新潟は楽しかったな」と思っていただけるように頑張ります!

【錦屋酒店】
住所:新潟市中央区花園1-2-2 ガレッソ1F
電話:025-244-0342
営業時間:月曜~土曜日9:30~19:30、日曜・祝日9:30~18:00
定休日:不定休
駐車場:ガレッソパーキング(※5,500円以上お買い上げで30分無料券をお出しします。駐車券をお持ちください。)
公式ホームページ:https://www.nishikiya-sake.com/
公式Instagram:@nishikiya_sake

© 株式会社新潟日報メディアネット