新年度は目の前なのに先生がいない…鹿児島県教委が臨時教員2000人募集 特設サイト開き猛アピール

記者会見で臨時的任用教員への応募を呼びかける中島靖治県教職員課長(中央)=8日、県庁

 新年度を前に、鹿児島県教育委員会が臨時的任用教員(臨時教員)の確保に力を入れている。8日、ホームページに緊急募集の特設サイトを開設。県庁で会見を開き、「子どもたちの成長を支えるために力を貸してほしい」と呼びかけた。

 募集しているのは小学校約900人と中学校約500人、高校約250人、特別支援学校約350人の計約2000人。現在は約1800人が勤務しているが、来年度は何人に更新してもらえるか未確定だという。

 臨時教員は、正規教員の産休や育休、病休などによる欠員を埋めている。新学期に児童生徒の転入で想定より学級数が増え、教員が足りなくなった際などにもカバーする。

 教職員課によると、昨年は臨時教員が十分に確保できなかった影響から、離島や大隅地域などで18人の不足が5月1日時点で発生した。今年1月末現在も、必要数に対し43人配置できていないという。

 教員免許を持っていれば、年齢制限はない。中島靖治教職員課長は「個別相談や研修もあるので、興味がある人はぜひ応募して」と訴えた。応募方法などは特設サイトで見られる。県教職員課=099(286)5267。

■「現場はいっぱいいっぱい」

 「新年度に教員が足らないなどということがあってはならない」。県教育委員会の中島靖治教職員課長は、記者会見で危機感をあらわにした。

 県教委は、臨時的任用教員(臨時教員)を2000人募集。8日には特設サイトを開設した。県内の教員約1万5000人のうち臨時教員は1800人で12%を占める。文部科学省の調査によると、2020年度の公立小中学校等教員定数に占める臨時教員の割合は、全国平均7.5%に対し鹿児島県は11.4%と上回る。

 年度途中に欠員が出た場合、臨時教員を確保できなければ、教員同士でカバーするしかない。50代の男性教諭が勤める県内の小学校では、病気などで複数の欠員が出ている。代替要員が見つからず、担任の穴は専科教員らが埋め、校務は別の教員で補う。「授業準備やテスト採点に充てる時間を割くしかなく、残業が増えている」と明かした。

 近年は臨時教員の確保が難しくなっている。背景には教員採用倍率の低迷がある。特別支援学級が増え、採用枠が拡大。ただ受験者は減少傾向のため、これまで臨時教員を担った層が採用され、正規の教員になった。

 応募者を確保しても、勤務地の希望が都市部に集中すれば、周辺部や離島の教員不足は解消されない。欠員を抱える小規模校の校長は「現場はいっぱいいっぱいの状態だ。ブラック職場との印象を変えないと、人は来てくれない」と働き方改革の必要性を訴えた。

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