<レスリング>“レスリング・ラブ”を貫く金城梨紗子・恒村友香子(川井姉妹)が、能登半島地震の被災地支援をあらためて訴える

2021年東京オリンピックで、あらゆる競技を通じて初の姉妹同時優勝を達成した金城梨紗子恒村友香子(ともに旧姓川井/サントリー)。2人とも2024年パリ・オリンピックの出場は逃したが、競技生活の続行を決意。妹・友香子は今年元旦に総合格闘家の恒村俊範さんと入籍し、新たな環境のもとで練習を続けている。同時に、地元の石川県を襲った能登半島地震の被災地支援をあらためて訴えた。

▲パリ・オリンピック出場は逃したが、選手生活の続行を決め汗を流す金城梨紗子(左)と恒村友香子=2024年3月6日、日大レスリング場

姉・梨紗子は昨年6月の明治杯全日本選抜選手権で櫻井つぐみに敗れ、櫻井が9月の世界選手権(セルビア)で優勝したことで、パリへの道が途絶えた。一児の母で、夫の勤務地である福井県在住。パリを逃したことを機に第一線からの引退となっても不思議ではない。

しかし「引退は全然考えていなかった。やめる機会を逸しているというか…」と話し、福井での練習のほか、ときに東京に出てきて日大の男子選手との練習を続けている。オリンピックの魅力は、子育てとの両立という困難があっても引きつけられるものなのか? それは、きっぱりと否定した。「もう(金メダルを)2つ取っていますので、未練とかはまったくないんです」-。

あるのは、「レスリングが好きだから」ということと、子供に生き様を残したいという思い。昨年12月の天皇杯全日本選手権59kg級で優勝したあと、「将来、自分が生まれて母親が弱くなったとは娘に思わせたくない。今は娘も分からなくても、記録などが残るし…」と話したが、その思いがレスリングを続ける原動力。

そのとき、「もう一度、海外に出たい」とも繰り返した。幸いにも、今年10月には非オリンピック階級の世界選手権がアルバニアで開催されることになり、59kg級で優勝した金城は代表争いで一歩リードしている。5月の明治杯全日本選手権で優勝すれば代表決定。出場が予想されるが、「楽しみにしてください」とにっこり。

「出場して、勝つことを楽しみにして、という意味?」との問いに、「いろんな受け取り方があると思います。エントリー発表を待ってください」と話して、笑みを浮かべた。

▲59kg級で全日本選手権を制した金城梨紗子。5月の明治杯全日本選抜選手権は?

災害を忘れないでほしい、と継続の支援を訴え

68kg級でのパリ挑戦も実らなかった友香子も、2028年ロサンゼルス・オリンピックを目指しての現役続行ということは否定する。「東京オリンピックへ向けては、本当に頑張りましたから」と話し、オリンピック挑戦は十分にやり切っている。今回のオリンピック挑戦が実らなかったからといって、「自分がダメになったとは思わない。ダメだから次を目指す、ということではありません」と言う。

マットを下りる気持ちも少しはあったが、「全日本選手権の試合はふがいなさすぎました。これでやめては、納得いかない」とも話し、闘う選手の本能が引退を引き留めているようだ。

体重的に65kg級での世界選手権出場を目指せる位置にいて、代表争いへの参加は考慮中だが、「世界選手権がなくても、続けていました」ときっぱり。結婚という節目での引退も完全に否定し、「レスリングは若いうちしかできない。できるうちに、しっかりやりたい」と言う。

▲全日本選手権は初戦敗退。雪辱を目指す恒村友香子

ここで姉が「結婚を機に競技生活をやめるケースは、(以前に比べて)減っているんじゃないですか」とアシスト。確かに、結婚によって選手生活の引退を決めるケースは少なくなくなっており、姉のように子供がいても続ける選手を含めて、妻であり母でもある選手は珍しいことではなくなっている。2人の活躍次第で、さらに増えていくことだろう。

2人にとっては、地震の被害に遭った地元の復興が大きな関心事。元旦に友香子がインスタグラムで幸せいっぱいの報告をした数時間後、地震が発生した。津幡町にある実家は短期間の停電と断水などで済み、被害と呼べるほどのことはなかったが、能登半島の被害には心が痛む。日本協会の募金活動に全面的に協力し、支援を訴えている。

当初は国民の多くが心配しただろうが、発生から2ヶ月以上が経ち、地元以外ではそうした気持ちが薄れていくのが自然だ。ともに「私達ができるのは、災害を忘れられないようにすること」と話し、引き続きの支援を求めた。

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