ジュリア4月以降もSTRONG女子王座守る「欲が出てしまった。もっと学びたい」スターダム退団濃厚も決意

スターダムの会見が8日、都内で行われ、10度目の防衛に挑むSTRONG女子王者のジュリアが会見。3・10後楽園大会で激突する挑戦者、ステファニー・バッケルとの調印式後、当サイトの取材に応じ、同ベルトへの思いを口にした。3月限りでの退団が濃厚だが、4月以降のさらなる防衛回数更新を誓った。

調印式では、同ベルトはメルセデス・モネのために作られた、という過去の〝定説〟を挙げた上で「ベルトを取った後もその言葉がずっと付いてきて、それが悔しくて、むかついた。でもやっと、少しジュリアの色に染まってきたんじゃない」と誇らしげにベルトを見つめた。

同ベルトは失意の末に見つけた、拠り所だった。ジュリアはアイスリボンを経て2019年10月にスターダムに登場。正式入団を果たした後、20年7月にワンダー王座を獲得し6度防衛。そして22年12月、ついに至宝ワールド王座を朱里から奪取したものの、23年4月に行われた3度目の防衛戦で中野たむに敗れ、短命に終わった。

「赤いベルトはスターダムに来て、とにかく目標にしていたもの。その前年(21年)の5★STAR GPはヘルニアで途中離脱して、翌年(22年)の5★STARを優勝して、朱里からやっと取れたと思ったら、すっと落としてしまった。心にぽっかり穴が開いたようでした」

ワールド王座時代を今、どのように総括するのだろうか。

「ベルトと恋愛は似ていると思っていて。赤いベルトとは長続きしなかった。最高峰のベルトだからどっしりしなきゃいけない、ちゃんとしなきゃいけない、団体の顔だ、というプレッシャーがどこかにあったと思う。それが吹っ切れたのが雪妃真矢との場外での試合(23年3・4代々木第二体育館、両者リングアウトによりV2防衛成功)だったんですけど、自分らしくやろうと思えた矢先に落としてしまった」

ジュリアが「それでも数日たったら開き直るのが自分」と前を向いた時、STRONG女子王座の創設を知った。女子部門のさらなる発展を目的に、プロレス中継番組NJPW STRONGが認定し、新日本プロレスが管理。23年4月に創設された翌月、米国でワンデートーナメントが実施され、ウィロー・ナイチンゲールが初代王者に就いた。「ワンデートーナメントには向後桃がスターダム代表で行ったんですけど、なんで向後が行っているかよく分からない。どういう基準で選ばれているんだろう、と興味が湧きました」。ほどなくタイトル戦が日本で行われることを知り、自ら名乗り出て挑戦権を手にした。そして23年7・5後楽園大会でナイチンゲールからベルトを奪った。ワールド王者時代の経験を経て、ベルトに対する意識に変化が起きていた。

「ベルトの色に染まるんじゃなくて、ベルトを自分の色に染める。どのベルトを持っていてもいい。STRONG女子のベルトは私が2代目で、まだ色がついていなかった。だったら、存在感があって、一番面白くて、自分のDNAを擦りつける気持ちでやってきました。よくファンの方から『スターダムは赤とか白とか、IWGP女子のベルトもあって、何が一番のベルトか分からない』と言われるけれど、ベルトの価値を決めるのはお客さんだと思います」

STRONG女子のベルトを自分色に染めると決めてからは、ガムシャラに走った。レスラー人生初となる米国での試合、防衛戦を3度経験しながら、今年2月までの8カ月で9回の防衛に成功した。

「リーグ戦があろうと、他のタイトル戦があろうと、途中で海外にも行って、初めて遭遇する怪物のようにでかい外国人選手と戦えた。年末にはメーガン(23年12・29両国)と戦って、スターダムの年間ベストバウトに選ばれました。ようやくベルトにジュリアのイメージがついてきたのかな、と手応えはあります」

特にベルトを奪ったナイチンゲールが印象に残っており「こんなに大きな体をしているのに、動けてムーンサルトができて、メーガンもそうだけど、ちょっとびっくりした」と語った。海外選手の迫力だけでなく、海外での遠征からも驚き、学びを得ることが続いた。

「世界が広がりました。ベルトと一緒に旅する中で、向こうでの興行の熱を日本に持ってきたいな、とも思いました。お客さんは『楽しんだもの勝ち』と思っているのがすごく伝わってきて、自分は表現者だからたくさん伝えなきゃいけないのに、逆にお客さんから与えてもらった。プロレスの好み、求められるものが日本と海外では全然違う。知らなかったことをたくさん学びました。そして欲が出てしまった。もっと学びたい気持ちが強くなりました」

ジュリアは3月限りでのスターダム退団が濃厚とされ、既に専門誌では退団を明言している。改めて確認すると、否定せずに「STRONG女子の挑戦者にはフリーの選手もたくさんいました。だから私が持ち続けてもいいと思っています」と、退団を機に返上する考えがないことを語った。

節目の10度目の防衛戦。相手はメキシコCMLLのステファニー・バッケルだ。「これまでの防衛戦では、体がデカくてパワフルな外国人選手、そして日本人選手もいた。ハイスピードな選手もいた。いろんなタイプがいたけれど、スターダムに来てからはCMLLの選手と戦うことはなかったので、ついにルチャドーラが来たか、という感じですね」と腕をぶした。「私はこいつとまだまだ一緒に過ごすつもり。高い山の頂上へ行き、一緒に絶景を見に行く」。国境を越え、学びに満ちたベルトを、手放すつもりはない。

(よろず~ニュース・山本 鋼平)

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