明治期の古民家を漫画図書館に再生 「長崎坂宿」が利活用探る

「町家ライブラリーぬい」大家の林さん(左)と小笠原代表=長崎市高平町

 明治時代に建てられた長崎市高平町の町家が昨年秋、私設漫画図書館「町家ライブラリーぬい」としてオープンした。前身は「時を紡ぐ町家Nui」。持続可能な形で残していくため、コワーキングスペースとレンタルスペースを併設して生まれ変わった。
 町家は1890年に建てられ、約10年前に2階を増築した。2012年、元国語教師で大家の林展子さん(73)が古屋付きの土地として売りに出ていたのを見て一目ぼれ。「土地よりこの家を残したい」と私財をなげうって購入した。
 改築中に分かった最初の家主の名前「ヌイ」を冠して18年から「家開き」。カフェや裁縫教室、撮影の舞台などに場所を提供してきた。出会いも多く楽しい日々だったが、収益は乏しく、体力的にも負担になってきた。消えていく町家を守りたいが、このままでは続かない。思いが重荷にもなっていた。
 そんな中、斜面地空き家を活用し宿泊施設を展開する「長崎坂宿」の小笠原太一代表(44)に愚痴をこぼした。小笠原代表は、林さんの「いろんな人に来てほしい」という願いと収益化などが共存する方法を模索し、無人運営できる私設図書館を中心とした活用を提案。長崎坂宿で借り上げて昨年11月にオープンした。本のジャンルはその場で楽しめる漫画を選んだ。
 1階にある図書館は棚の約40スペース。月額2980円で1スペースを借りて「一箱館長」となる。来館者は各スペースの漫画を読み、棚ごとに付けられたQRコードで各館長の活動や人となりを知ることができる。約10人が館長になっていて、既に利用している県内の作家は、好きな漫画と自分のミニチュア作品を置いて紹介している。
 館長には、ぬいの経営状態を公開しており、古民家活用の疑似体験ができる。小笠原代表は「リアルな状況を知ってもらうことが、空き家の利活用という全体の利益につながるのでは」と期待する。
 コワーキングスペースは1階に6区画、レンタルスペースは2階の和室。仕事や勉強、映画鑑賞などに使え、定期利用もできる。
 林さんは「気持ちだけでは維持できない。一緒に動いてくれる人と、この町家を生かし守っていきたい」と笑顔で話す。
 入場の直前まで予約可能。16日まではひな祭り期間として二つのひな壇を展示しており、9、16日は無料で入場できる。

「一箱館長」の人となりや、館長が選んだ漫画と制作した作品が置かれたスペース

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