松田甚次郎と妻睦子の半生 演劇「土に叫ぶ人」、あす10日大石田公演

農村振興に身を投じた松田甚次郎と妻睦子の半生を表現する「土に叫ぶ人」の一場面=大石田町虹のプラザ

 宮沢賢治の教えを実践し、農民の暮らしを豊かにしようと奮闘した新庄市出身の農村指導者・松田甚次郎(1909~43年)の生き様を描く演劇「土に叫ぶ人 松田甚次郎と妻睦子」が10日、大石田町虹のプラザで上演される。同町出身の睦子の視点で語られ、町内外の出演者が2人の激動の半生を演じる。

 甚次郎は稲舟村鳥越(現新庄市鳥越)の大地主の長男として、睦子も横山村(現大石田町横山)の名家に生まれた。甚次郎は盛岡高等農林学校(現岩手大農学部)在学中の1927(昭和2)年に賢治と会い「小作人たれ、農村劇をやれ」との言葉に突き動かされ貧しい農村振興に身を投じた。

 「土に叫ぶ人」は、農業青年育成を目的にした私塾「最上共働村塾」の活動を記録した甚次郎の著書にちなんだタイトル。詩人・劇作家の近江正人さん(73)=新庄市=が脚本と演出を手がけ、これまで新庄市や岩手県花巻市などで上演された。近江さんは「昨年は甚次郎没後80年、今年は睦子没後20年の節目。夫を気丈に支え続けた存在を知ってほしい」と語る。

 町内の演劇集団・プロジェクト虹や小中学生、町外の演劇団体なども参画し、昨年10月から練習を重ねてきた。町内在住の団体職員奥山愛海(まなみ)さん(23)のナレーションで進行する。甚次郎役の介護福祉士松田直也さん(28)=東根市=は、くしくも同姓の鳥越出身で「縁を感じる。地域の魅力や価値を見つけて活動した姿を伝えたい」。睦子役で同町出身の会社員二藤部怜愛(れいあ)さん(23)=山形市=は「ぶれない芯の強い女性を表現したい」と意気込む。

 10日午後2時開演でチケットは完売。9日午後4時からのプレビュー公演は高校生以上800円、中学生以下無料(要整理券)。問い合わせは虹のプラザ0237(35)2094。

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