じつはあなたもニオってるかも!?ワキガになりやすい人の特徴って?

体臭の中でも、気になるのが脇の下のにおい。しかし「もしかしてワキガでは?」と思っても、自分では判断しづらいですよね。

ワキガのセルフチェックの方法と、ワキガの原因・なりやすい人の特徴や治療法などについて、みずほクリニック院長の小松磨史氏に聞きました。

Q.ワキガの原因を教えてください

汗を分泌する汗腺には、アポクリン腺とエクリン腺があります。そのうちのアポクリン腺から分泌される汗の成分を、皮膚面に存在する常在菌が分解することで、ワキガ特有のにおい成分が発生します。

アポクリン腺は脇だけでなく、乳輪・性器まわり・おへそ・肛門周囲・鼠径部(そけいぶ:股のつけ根)にも存在します。近年は、これらの部位の汗のにおいを気にする人も増えつつあり、ワキガ同様ににおい治療の対象となり得ます。

ワキガの症状は、性ホルモンの影響でアポクリン腺からの汗の分泌量が多くなる、思春期以降に生じます。

Q.ワキガになりやすい人の特徴を教えてください

ワキガは優性遺伝です。親がワキガであれば、子どももワキガの症状が発生する確率は高いです。女性より男性の方がアポクリン腺が多いため、男性の重症度が高くなる傾向にあります。人種的には白人・黒人でワキガが多く、黄色人種(東洋人)ではその頻度は低いです。日本人における割合は、全人口の1割程度とされています。

また、耳の垢が乾燥タイプより湿っている人はワキガの確率が高いとされます。さらに外耳道の中の毛量が多い人において、ワキガの発生率が上昇するとも言われています。

Q.自分がワキガかどうかを知る、セルフチェック方法はありますか

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「ガーゼ・テスト」と呼ばれるチェック方法があります。

脇にガーゼをはさんで、暖房を少し強めにした部屋で10分ほどすごしてください。10分後、ガーゼを取り外してにおいをかいで、においが強ければワキガの可能性があります。

下に、日本形成外科学会が提唱する、ガーゼ・テストによるにおいの重症度の評価基準を示します。

・ステージ1:ガーゼは全くにおわない
・ステージ2:かろうじて分かるにおいがする
・ステージ3:よく嗅げばにおいが分かる
・ステージ4:横にいる人ににおいが分かる
・ステージ5:人を間に挟んでいてもにおいが分かる
※いずれも制汗剤を使用しない状態での評価

ガーゼ・テストは、自分では主観が入りやすいので、家族など他者に客観的に評価してもらうのがいいでしょう。身近な頼める人に確認してもらうのが確実です。

緊張時などある特定の条件下でのみ、においのある汗が出る人もいます。そのため「ガーゼ・テストでにおいがしなかったからワキガではない」とは言いきれません。

Q.ワキガの対策・治療にはどのような方法があるのでしょうか

ワキガの対策と治療方法について列記します。

1.市販のデオドラント製品の使用:市販のデオドラント製品でも、ある程度においを抑えられます。あくまで対症療法であり、根本的な解決にはなりません。重度の多汗症・腋臭症(えきしゅうしょう)では効果に限界があります。

2.塩化アルミニウムの使用:クリニックで塩化アルミニウムが処方されることがあります。昔からあるワキガの外用療法のひとつですが、対症療法であるため効果に限界があります。

3.外用抗コリン薬の使用:アポクリン腺からの発汗は、コリン作動性の神経の支配下にあります。そのため抗コリン作用のある、外用抗コリン薬(塗り薬タイプ)が効果を発揮します。日本の厚生労働省が認可している製剤は、ソフピロニウム臭化物(エクロック(R)ゲル)と、グリコピロニウムトシル酸塩水和物(ラピフォート(R)ワイプ)の2種類です。

4.内服薬で全身的に汗の分泌を減らす:プロ・バンサイン(プロパンテリン臭化物錠)という内服薬は、脇汗だけでなく手汗など全身の汗の分泌を抑えてくれます。クリニックでのみ処方可能な薬です。汗以外の分泌物の量も減るため、目や口の中が乾いたりする副作用があります。

5.ボトックス注射:ボトックス注射では、末梢神経のアセチルコリン放出抑制作用により、汗の分泌を抑えます。脇の有毛部の皮内に細かく注射することで1週間後くらいから汗の量が減少し、ワキガ特有の臭いも抑えられます。薬の有効期間が4カ月から6カ月のため、定期的なメンテナンスケアが必要な治療です。

6.手術:脇の下の皮膚を切開して薄く剥がして、においの元となる汗を分泌しているアポクリン腺をハサミで切除する方法です。アポクリン腺を直接除去するため、最も確実で効果の高い方法とされます。デメリットとしては、脇の下に傷跡が残る・皮膚にしばらくつっぱり感が残るなどが挙げられます。

保険診療で行うクリニックと自費診療で行うクリニックがあり、後者の方が高額になります。超音波でアポクリン腺を破砕(はさい)するタイプの手術療法もあります。基本的にこちらは自費診療となります。

7.照射治療:ミラドライという厚労省の薬機法の承認を受けたワキガ治療専用の照射機器があり、治療法として人気が高いです。マイクロ波の一種を脇の皮膚に照射して、皮下にあるアポクリン腺を焼きます。これによってアポクリン腺を破壊・萎縮させ汗の分泌量を減らすことで、ワキガのにおいが改善します。傷跡や拘縮(こうしゅく:つっぱりのこと)が残らない点が、手術治療と比較した際の大きなメリットです。自費診療となりますので、保険適用の手術より費用は高くなります。

ミラドライ以外にも、国内でワキガ・多汗症に対して効果ありとされる照射系の医療機器は複数あります。しかし効果が実証されていないものが多く、十分な注意が必要です。

Q.ワキガを予防したり、脇のにおいを抑えたりするためのセルフケアはありますか

ワキガに対するセルフケアには、以下のものがあります。

1.脇を清潔に保つ:においの原因となる汗が脇に付着したままの状態が長く続くと、バクテリアがこれを分解してにおいを発生させます。そのため、脇を清潔に保つのが必須です。最低でも朝・晩はシャワーを浴び、日中も時間に余裕のあるときに汗の拭き取り心がけることで、においをある程度は抑えられます。腋臭症治療のガイドラインでは、脇毛の処理も有効とされていますので、脱毛治療(レーザー脱毛)もあわせて行うとよいでしょう。

2.体重や食事量のコントロール:肥満体型の人の場合、減量も重要です。脇の下に余分な脂肪がついていると皮膚と皮膚の間が深い溝状になり、そこに汗が滞留・湿潤環境が発生してバクテリアが繁殖しやすくなります。肥満体型の人は汗のにおいに要注意と心得て、食事量をコントロールし余分な肉が脇の下につかないように日頃から心がける必要があります。

3.食生活の見直し:ワキガの症状があるなら、普段食べるものにも注意を払いましょう。コレステロールを多く含む動物性脂肪や赤身肉を大量摂取すると、体の皮脂分泌が増えます。また、アポクリン汗腺が活性化され、脇のにおいも強くなるとされます。肉類や油分を多く含む食品の摂取を抑え、バランスのよい食生活を心がけましょう。

4.デオドラント製品の使用:市販のデオドラントは最も簡単で基本的なセルフケアです。軽度のワキガであれば、コンビニやドラッグストアなどで入手可能なものでも、十分に効果を発揮します。ただし、制汗剤類を使いすぎると接触性皮膚炎が起きて、脇の下の皮膚に炎症後色素沈着や色素脱失を生じることがあり、注意が必要です。通常のデオドラント製品を使用してもまだ臭いが感じられる場合には、クリニックで医師に専門的なアドバイスを受けることを推奨します。

教えてくれたのは・・・

小松 磨史先生

みずほクリニック 院長。日本形成外科学会・形成外科専門医、日本美容外科学会・正会員、医学博士。札幌医科大学 大学院卒業後、米国フロリダ モフィット国立癌センターに数年間勤務。帰国後、札幌医科大学 形成外科 助教、北海道砂川市立病院 形成外科 医長、大手美容形成外科入職(院長歴任)を経て、「一人ひとりのコンプレックスを克服し、自信に満ちあふれた笑顔と晴れやかな気持ちでいて頂けること」を目指して、2014年に東京・池袋に「みずほクリニック」を開院する。

「みずほクリニック」のHPはこちら

取材/文:山名美穂(Instagram「@mihoyamana」)
編集:サンキュ!編集部

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