勤務時間が一定期間で変わるシフト労働に適応できるかどうかは遺伝的背景に大きく左右される、とする研究結果を京都府立医科大学や立命館大学などのグループがまとめた。周期の長い夜型の体内時計を持つマウスは、健康障害が起きやすい傾向にあったという。
深夜を含むシフト労働は睡眠障害や免疫機能の低下、心血管疾患、メタボリック症候群、不妊症・月経不順といったさまざまな「概日リズム障害」をもたらすとされる。体内時計の仕組みを解明した業績に対して2017年にノーベル生理学・医学賞の授与を決めたカロリンスカ研究所(スウェーデン)は、「体内時計に従わない生活を続けるとどうなるか」とさらなる研究を呼びかけていた。
研究グループは、概日リズム障害で発症が多い脂肪肝に着目。マウスの飼育環境の明暗を12時間ごとに切り替え、そのタイミングを4日ごとに8時間ずつ前倒しする「シフト」を1年間続けたところ、7割が脂肪肝を発症した一方で、3割は正常だった。
脂質の代謝などに関連する遺伝子を解析すると、脂肪肝を発症したマウスとそうでないマウスはそれぞれパターンが似通っていた。脂肪肝を発症しやすい遺伝子パターンは、体内時計の周期が長い「夜型」の傾向にあったことから、体内時計の個体差が概日リズム障害の発症しやすさに強く関連していると結論づけた。
同グループの八木田和弘・府立医大教授(統合生理学)は、「みんなしんどいところを頑張っている」「頑張らないと成長しない」といった一方的な見方が職場環境の改善を妨げているのではないか、とした上で、「シフト労働に適応できるかどうかには個人差があると認識すべき。夜勤が欠かせない職場も多いが、柔軟な勤務シフトの設定など負担軽減の工夫が必要だ」と話している。
研究成果は2月、米科学誌に掲載された。