「地獄みたい」用水路が真っ赤に びっしり浮かぶ厄介者の正体は…【岡山】

身近な問題や疑問について調査・報道する「どーなっとん」です。今回は、「岡山市内の用水路が真っ赤に染まっている」との情報があり、取材しました。

一体なぜ?調べていくと、地域の住民を困らせる厄介者の存在が明らかになりました。

用水路が真っ赤に染まっている「ゲって感じ」

(通行人)
「ゲッて感じ。なんだこの真っ赤っ赤」
「地獄みたいなね。なんかね。何地獄だろ?」
「…ワイン?」

(松村みなみ記者)
「こちら普通の用水路が続いていますが、この先、何だか『赤いもの』で埋め立てられたようになっています。もしくは『赤いカーペット』でしょうか。真っ赤に染まっています」

岡山市南区浦安に長くのびる用水路。その一部が、【画像①②】のように一面赤くなっています。水の流れは、ほとんど感じられません。

衛星写真で見ても、【画像③】のようにひと際目立つこの一角。日によっては、見渡す限り極彩色になっているといいます。

(通行人)
「ずっとこうなんです。何なんですかね」
「向こう側を車で通った時に何これ?と思いました」
「え?この先道路に変わったんだっけ?みたいな…でもきっと川よね、みたいな」

その正体は?小型カメラを差し入れてみると...

この中は、本当に水なのでしょうか。小型カメラを差し入れてみることにしました。

(松村みなみ記者)
「いきます!あ、スッと入りました。確かに、水のようです」

カメラの映像を確認すると。。。

(松村みなみ記者)
「ほうじ茶みたいな色をしています」(【画像④】参照)

水中は薄暗く、水面に何かがびっしりと浮いているように見えます。植物でしょうか。

ー大体何年前ぐらいから?
(近所の人)
「10年前ぐらいじゃない?気持ち悪くない?この色。嫌じゃろ。住んでみて。すくわれ(岡山弁で「掬ってみて」)、ちょっと」

というわけで、近所に住んでいるこちらの女性と一緒に、赤いものをすくってみました。するとタモに掛かったのは。。。

(松村みなみ記者)
「海藻みたいな感じです」(【画像⑤⑥】参照)

「これは一体何?」その正体を専門家に調べてもらうと...

これは一体何なのか。倉敷市の自然史博物館で正体を調べてもらいます。

(倉敷市立自然史博物館・学芸員⦅植物分野》鐵慎太朗さん)
「非常に見分けが難しいんですけど、アゾラの仲間で『ニシノオオアカウキクサ』か『アイオオアカウキクサ』という種類。大発生している報告がときどきあって、昨年も博物館に問い合わせがありました」

アカウキクサ。通称「アゾラ」と呼ばれる水生シダ植物です。今回見つかったのは外来種。国内には、「アイガモ農法」のアイガモのエサや肥料として広がったものです。しかし、なぜあの場所に?

(倉敷市立自然史博物館・学芸員⦅植物分野⦆鐵慎太朗さん)
「可能性としては水鳥・カモ・サギが、アカウキクサの仲間がいるところに降り立って、飛ぶときに足にくっついて運ばれる。あまり栄養がないところでも自ら栄養を作って増えていく」

歯止めがかからない「拡散」…長年頭を悩ませている岡山市

水鳥などによって簡単に拡散し、なかなか歯止めがかからないのだといいます。見た目の強烈さだけでなく、生活にも影響を及ぼしかねないとして、岡山市は長年頭を悩ませています。

(岡山市南区役所農林水産振興課 二宮雄一課長)
「北から流れてきて、ここに全部溜まってます。これを取らないといろんなところに流れていく。つまりは『通水障害』を起こすということ」

実は以前、問題の用水路の周辺にある幅の狭い用水路で、アカウキクサが詰まってしまったことがあるといいます。

そのため、現状を放置すると周辺に広がり、通水障害を起こす危険性があるとして定期的に取り除いていますが、一向に解決しないといいます。

(岡山市南区役所農林水産振興課 二宮雄一課長)
「たも網で、一生懸命人海戦術で取っていました。厄介だなと」

「すさまじい勢いで増殖」住民の生活を困らせる別の植物も?!

さらに、岡山大学で水生植物を研究している中嶋准教授によりますと、アカウキクサと共に長年、地域住民の生活を困らせている別の植物があるといいます。

(松村みなみ記者)「太い…」
(岡山大学農学部 中嶋佳貴准教授)「これはオオカナダモです」

オオカナダモという外来植物です。浮いているアカウキクサと違い、水中に沈み、長くひっかかりやすい形です。春から秋にかけてすさまじい勢いで増殖するといいます。

(岡山大学農学部 中嶋佳貴准教授)
「簡単に切れやすいんです。こんな感じで切れていくんですけど(【画像⑦】)、切れたやつが新しいところに流れて根付いて、また新たな群落を作る」

「最後は大雨が降った時に排水機場に詰まってしまって、内水氾濫。床下・床上浸水の可能性が出て来る」

大雨の時には氾濫を引き起こすおそれもあるオオカナダモ。取り除こうにも、用水路には薬をまくことができないため、すくい上げるしかありません。

そしてオオカナダモとアカウキクサ…どちらもわずかな取り残しで再生してしまうのです。

(岡山大学農学部 中嶋佳貴准教授)
「それぞれの種に対して、適切な処置・取り方や、増えるのを防ぐ方法を、専門家を交えながら行政・地元が一緒になって取り組むことと問題解決に光がみえてくる」

岡山市は、来週アカウキクサを取り除く作業を行う予定です。用水路を覆う植物との戦いは続きます。

アカウキクサ 見つけたらどうすればいい?

【スタジオ解説】

(坂井亮太キャスター)
「人海戦術しか、今すべがないというのもおどろきでしたね」

(コメンテーター 春川正明さん)
「農林水産省によると、増殖のスピードがすごく速いので、見つけたらすぐ除去するしかない。除去は手作業しかないっていわれているんですね」

「VTRにもありましたように、春から夏にすごく増殖するので、今のこの時期、その前に除去するのが最も効果的だといわれています」

(坂井亮太キャスター)
「アカウキクサにもさまざまな種類があります。今回のものは外来種でしたが、中には在来の絶滅危惧種、特定外来生物もあります」

「見つけた際には、確認することなく持ち運んだりしないよう、扱いなどにも注意が必要です」

「アカウキクサには様々な種類があるということで、今回のものは外来種でしたが、中には在来の絶滅危惧種や特定外来生物もあります。見つけた際には確認することなく持ち運んだりしないよう扱いにも注意が必要です」

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