8月9日付 警察官の父への表彰状 長崎原爆資料館に波佐見の原さん寄贈 今夏展示予定

寄贈品を前に、長崎原爆で殉職した警察官の父について話す原さん=長崎原爆資料館

 長崎県東彼波佐見町の洋品店経営、原昭治さん(78)は7日、長崎原爆で殉職した警察官の父、近市(きんいち)さん=当時(41)=が1945年8月9日付で県から授与された表彰状を長崎原爆資料館に贈った。同館によると、当時、避難誘導や救護に当たった警察官の功績を示す品が収蔵されるのは初めて。
 「県警察史・下巻」などによると、近市さんは長崎署の浦上地区防空警護班長として従事中に被爆。浦上地区から同市立山1丁目の県防空本部跡(立山防空壕(ごう))に向かい、8月15日、避難誘導中に亡くなったという。県警察学校の慰霊碑にも名前が刻まれている。
 表彰状は当時の永野若松知事名。「原爆」の文字はないが、「敵機の来襲」という文言などから原爆投下後の混乱下で警防業務に従事した状況が推察される。原さんの母(故人)が長年、自宅に保管。原さんも交通安全運動に携わる中で、警察官だった父の功績を後世に伝えたいと思い、同館に託すことにした。
 7日、長崎市平野町の同館を訪れ、表彰状や近市さんが使っていたかばん、きせるなど7点を寄贈。市被爆継承課の栁健太主事は「現場で使命をまっとうした警察官の功績は手記の中でしか分からなかったが、これを補完する大変貴重な資料であり、究極の状況下で人々と警察官がどう過ごしたのかを伝えるための大切な遺物」と話した。
 原さんは「手元から離れると思うと、少し寂しい気もするが、安堵(あんど)している。多くの方に見てもらいたい」と話した。同館は今年夏の企画展で展示する予定。

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