初期社会主義者らのパトロン・岩崎革也の生涯紹介 京都・南丹市立文化博物館

岩崎革也

 初期社会主義者らのパトロンとして知られる京都府京丹波町出身の政治家、資産家の岩崎革也(1869~1943年)の没後80年を記念した企画展が、南丹市園部町の市立文化博物館で開かれている。堺利彦や幸徳秋水から送られた多くの直筆書簡から幅広い交流を探るだけでなく、須知町長や須知銀行頭取としての事績が分かる文書もそろえ、地域の発展に尽力した名望家としての側面も伝えている。

 岩崎家は当時、丹波屈指の資産家で、革也は父などが創立した同銀行の頭取や町長、府議を務めた。中江兆民の民権思想に共鳴した後、03年ごろから幸徳らとの交流を始め、文通や面会を重ねながら金銭的に支えた。子孫が保管してきた書簡類は10年前に同館に寄贈され、地元の元高校教諭らと分析してきた。

 革也に注目する企画展は2度目。幸徳や堺からの支援要望や活動報告、マツタケを贈られたことへのお礼など多彩な書簡、長年付けていた日記に加え、革也の蔵書を展示し、多くは初公開となった。

 大逆事件で死刑となった幸徳の著書には革也の書き込みがある。処刑を知った日、慰霊のため花を供え、香をたきながらこの本を読み「昔のことなどさまざまな思いが滴り落ちてきて、気持ちを抑えることができない」と追悼しており、親密な関係がうかがえる。

 展示では革也の地域活動も重視。丹波地域などに11支店を構えた同銀行の営業報告書のほか、町長として建てた旧須知小(現存)の完成記念誌や、農業用のため池「大滝池」の工事写真もそろえた。

 だが、社会主義者との関係から警察から要注意人物とされ、15年には町長に選出されながら、府が不認可とした。その通知書を展示し、弾圧のあった時代背景を伝えている。

 担当した犬持雅哉学芸員は「社会主義への共鳴に加えて、地域に尽くした面にも注目してほしい」と話した。

 3月24日まで。月曜休館。午前9時~午後5時。入館料が必要。

岩崎革也の日記や社会主義者と交わした書簡がそろう企画展(南丹市園部町・市立文化博物館)

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