【ひとり暮らしのお宅拝見】72歳、団地住まいのソネジュンコさん「お金はなくても工夫次第で心地よい部屋は作れます」

「DIYって意外に楽しい! お金はなくても工夫次第で心地よい部屋は作れます」と話すのは、著書『71歳、団地住まい 毎朝、起きるのが楽しい「ひとり暮らし」』(ダイヤモンド社)が反響を呼んでいる、ボディマイスターのソネジュンコさん。心地いいひとり暮らしの工夫やアイデアについて、お話を伺いました。

お話を伺ったのは
ボディマイスター
ソネジュンコさん

そね・じゅんこ●1952年大阪府生まれ。
裕福な家庭に育ち、結婚後3人の子宝に恵まれるも離婚。実家に戻るが父の会社も倒産し赤貧生活の中、整体院に勤務、その後独立。
61歳のとき末期寸前のがんと診断されるが奇跡的に回復。
現在、大阪市郊外の団地でひとり暮らしを満喫中。

『71歳、団地住まい毎朝、起きるのが楽しい「ひとり暮らし」』

波瀾万丈の人生ながら前向きに明るく、お金をかけずに料理、手芸、洋裁、DIY、パソコンなどを楽しむソネさん。その豊かな「ひとり暮らし」の工夫やアイデア、日々の発見や喜びを綴った一冊。

UR賃貸の1DKは自分の「お城」

ボディマイスターとして大阪市内に「スタジオ ソネ」を開設。フィットネスのレッスンを行うソネジュンコさんは、現在72歳。7年前から大阪市郊外の団地の一室、1DKの賃貸住宅でひとり暮らしをしている。

「きっかけは61歳のときに、子宮頸がんを患ったことです。『ステージⅢC』、末期寸前のがんでした。幸い奇跡的に生還できましたが、この経験はこれまでの生き方を振り返る出来事になりました。それまでも、人間関係、食事、睡眠と最大限の努力をしてきたつもりだったけれど、それは見当違いではなかったのか。そんな思いが芽生えたんです。すべてを手放してシンプルに生きたいと思い、今の賃貸に移りました」

ソネさんの半生はジェットコースターに乗っているかのような波瀾万丈の日々だった。裕福な家庭に生まれ育ち、結婚して3人の子どもに恵まれるも離婚。実家に戻ったところ父の経営する会社が倒産して49歳で住む家を失い、預金通帳の残高はゼロに。しかし整体院で経験を積んだことが今の仕事につながり、ようやく安定した暮らしができるようになったところで、がんが判明した。

「人生何が起こるかわからない。だからこそ、今この瞬間を楽しまなければ損だと、自由気ままに生きることにしたんです。3人の子どもが独立したとき、自分が変化を好む性格ということもあって、住まいは一生賃貸でいこうと決めました。今の部屋は初めてのUR賃貸住宅。保証人もいらないし、間取りも満足で快適です。もう自分の『お城』ですね(笑)」

部屋の様子を見ると、「これが本当に1DK?」と目を疑ってしまうほど、広々としている。

大切にしている暮らしの軸は「我慢しない」「心地よさを優先する」

「こぢんまりした部屋がいくつもあるよりは、広いスペースがひとつあるほうが好き。2つある広い部屋をぶち抜いてひと部屋として使っています。せっかく広くしたんだから、全部今の自分に合わせようとカスタマイズしました。今後は楽しく生ききることが自分の使命。『ストレスになる我慢はしない』『心地よさを優先する』と決め、それを実現できる部屋や暮らし方にしたんです」

といっても経済的な余裕はない。そこで道具や資材を集めてDIYに乗り出した。しかし、ソネさんは手間のかかることも嫌いな性格。

「だから調べるんですよ。できるだけ安く、手間を省いて自分の『こうしたい!』を実現するにはどうしたらいいか。今はネットで情報がいっぱい出てくる。これというものを見つけたら、あとは自分で動く。重い木材などを運ぶときだけは、子どもたちを巻き込みますけど(笑)」

自由に釘を打ったり、額を飾ったりするための壁面を支柱と板で作り、母の形見の和だんすで玄関に靴収納を作った。スペースの狭い洗面所は、突っ張りアジャスターと棚板で「ツールタワー」に。一番のお気に入りは、長い時間を過ごすアイランドキッチン風のカウンターだ。

「昔、お金があったときにオーダーした流し台を再利用して作りました。廃材で天板を作って渡し、ペンキを塗った後にクッション性のあるニスを塗る。するとすごく肌触りのいい仕上がりになることがわかりました。もちろん全部独学ですよ(笑)。私は長生きしたいとは思わないんですけど、死ぬ1週間前までは仕事をしていたいんです。それには食事をおろそかにしてはダメ。広々と使いやすいキッチンで食を大事にすることには、こだわりました」

狭い洗面所には「ツールタワー」を設置して有効活用。タオル、洗剤、ドライヤー、掃除道具一式すべてを収納。
古い流し台を利用して作ったキッチンカウンター。天板には電源を配置してアイランドキッチンに。

自由を謳歌できるひとり暮らしは最高

もうひとつソネさんが気に入っているのが、パソコンまわりのスペースだ。2000年代初頭からパソコンに触れ、66歳でYouTuberに。動画編集も自ら行っていて、パソコンは生活に欠かせない。そのためデスクまわりは、光が入って見えやすくなるように工夫した。好きなことを思い切り楽しめる仕掛けがあちこちに施されているのだ。

66歳でYouTuberとなり今では動画編集もこなすソネさん。パソコンまわりは落ち着く一角。
間仕切りを取り払い2部屋をひと続きにして広々使う。風通しがよくなり気持ちも前向きに。

よりシンプルな暮らしを求めて、写真や若い頃に集めた服などは大量に処分した。子どもたちの負担を思うとできるだけ身軽でいたい。何より過去への執着は不要だと感じたからだ。

「私は前しか見ない人間。70過ぎたら後ろを振り返って反省しても何も生まれないんですね。それよりも、次に何をしようかと楽しいことを考えたほうがいい。ひとり暮らしはその自由があるのがいいですよね。『こんなによかったの?』って思うくらい(笑)。最高ですよ」

シンプルな生活にはしたいが、すべてを削るミニマリストにはなりたくない。いつもおしゃれをして、心をときめかせていたいとも思っている。

「ひとりで生きることを迷っているのなら、いきなりひとり暮らしを始めなくても、喫茶店でひとりの時間をもつとか、知っている人のいないお稽古事に参加してみるとかでもいいと思うんです。いろいろやってみて自分に合うスタイルを探せたら楽しいですよね。柔軟に考えて、一番安らげる場所をもてたらいいんだと思います」

ソネさんの心地よくひとりで暮らす3カ条

①健康の基本は食事。味つけはシンプルに

がんから回復して食欲が出てきた頃から、体が喜ぶ食事のとり方についての情報をたくさん集めては試すようになったソネさん。食事の回数を1日2食に減らしてみたところ、体が軽くなって、お通じもスムーズになり、深くて質のいい睡眠がとれるようになったそう。思い込みをなくすことも大事だと気づいた。

②厳選したアイテムをアレンジして楽しむ

ソネさんのファッションのポリシーは「個性的」であること。自分を最も自分らしく見せるため、たくさんの服は持ちたくないが、「ここだけは譲れない」というこだわりはある。そのひとつが「真っ白なシャツ」。値段は左から5000円、2万円、980円。値段ではなく、シンプルだからこそ自分に似合うものを厳選。

自分流にアレンジして着こなす。シンプルな一枚も、裾を結ぶだけでアレンジがきいて、全く印象が異なるシルエットに。

③夕食後は安らかな睡眠に向けてのリラックスタイム

仕事が好きで、がんになる前は昼夜かまわず時間があれば仕事をしていた。しかし「わざわざリラックスすべき時間に仕事をしなくてもいい」とその習慣を改め、「夜はプライベートな時間」と割り切った。夕食後は安らかな睡眠に向け、のんびり入浴するなど自分を休ませる時間に充てている。

病気を経験したあと、「ぐっすり眠るのにも体力が必要」と痛感。睡眠の質も大切にしている。

※この記事は「ゆうゆう」2024年4月号(主婦の友社)の内容をWEB掲載のために再編集しています。

撮影/川瀬典子 取材・文/志賀佳織


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