開幕3戦負けなしで2位浮上! 若手を育てながら勝つ、ベガルタ森山佳郎監督の手腕

[J2第3節]仙台 1-0 水戸/3月10日/ユアテックスタジアム仙台

2022年のJ2降格後、監督交代が相次ぎ、昨季は16位と低迷した仙台。クラブは、昨年までU-17日本代表の監督を務め、24年間一貫して育成年代の指導を行なってきた森山佳郎監督にチーム再建を託した。

そして迎えた今季、開幕から3戦負け無し(2勝1分)と好調なスタートを切り、現在2位。ここ2年間、苦しんできたチームはようやく浮上のきっかけを掴みつつある。

3月10日に行なわれたJ2第3節・水戸戦。前半は相手を押し込みながらも得点が奪えない展開だったが、焦らずまずは良い守備から入った。

「9番の選手はこの2試合、決定機やPKを取っている選手だったので最大限に気をつけて、ほぼ仕事をさせなかった」と森山監督が振り返った通り、まずは相手のエースストライカーであるFW安藤瑞生をDF小出悠太、DF菅田真啓にしっかり抑え込ませた。

そして「サイドもドリブルに特長があってスピードのある選手だったので、1対1で負けて突破されているようだとかなり苦しい展開になったが、そんなに良い仕事をさせなかった」と、両サイドもDF髙田椋汰とDF石尾陸登が粘り強く身体を張った守備で抑え込み、試合の主導権を握った。

後半は水戸も前に出てきて、パスをつないで決定機を作る場面もあったが、76分、小出が相手のパスをカットすると、途中出場のMF郷家友太にパスを通す。

「最初、コイちゃん(小出)から縦パスを受けて、菅原(龍之助)が左に走っていたので使おうと思ったのですが、ディフェンダーが菅原を気にしているようだったので、判断を変えて右にトラップして、(相良)竜之介に合わせて、良いところにボールを落とせました」と、郷家は前線のMF相良竜之介にパス。

相良は「友太君のボールの質とファーストタッチで決まったと思っています。うまく良いところに(ボールを)置けて、キーパーの位置も見てうまく打てたので良かったです」と、鮮やかなループシュートを決めて仙台が先制に成功した。

その後はDFマテウス・モラエス、DF知念哲矢を投入し、相手の攻撃をしっかりとはね返し、1-0でホーム開幕戦を勝利し、第2節からの連勝となった。

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今季の仙台は20代前半の選手が多い編成で、この日の先発メンバーも36歳のGK林彰洋と、32歳のMF長澤和輝などベテラン選手はいるが、髙田、石尾、MF工藤蒼生、MFオナイウ情滋と大卒1~2年目の選手がスタメンに多く名を連ねた。ゴールを決めた相良も高卒4年目の21歳だ。クラブは育成年代の指導経験豊富な森山監督に、若手選手を育ててもらいながら勝っていくことを求めている。

こうしたなか、試合に出ている若手選手は自信を持ってプレーしている。ボランチの工藤蒼は昨季、公式戦に1試合も出場できなかった。しかし今季は開幕から先発出場を続け、持ち前のボール奪取能力の高さを活かし、中盤の守備を安定させている。

「『ボールを持った時に前を向け!』と常々言われています。そうした意識を持ってできているので、自分も成長できています」と森山監督の指導を受け、持ち味を活かせるようになってきた。

昨季は18試合・3得点でレギュラー定着とはいかなかった相良も、今季はここまでの3試合で2ゴール・1アシスト、ルヴァンカップでも郷家のゴールをアシストするなど、公式戦4試合全てで得点に絡む大活躍を見せている。

「『自信を持って行け』と言われています。僕らからしたらメンタル的にも乗せてくれます。ミスをしても『後ろの仲間が守ってくれるので自信を持って仕掛けろ』と言われています」と森山監督のポジティブなアドバイスを力に変えている。

若手選手について森山監督は、「『やれる、やれる』と信頼して使っていて、実際やってくれています。かなり若い選手をルヴァンカップで出しましたが、評価としては『自分の武器では通用しているけれど、ちょっと足りないところがある』というところなので、そこを解決できれば十分サブに入れますし、今日サブに入れなかったメンバーも『俺もチャレンジできる』と感じてくれていると思います」と、信頼して起用しており、十分リーグ戦に絡む力があると選手に伝えている。

また、キャンプ中から選手間の競争を煽っている。「キャンプからずっと主力を決めないで最後まで突き通したので、だいぶ若い選手も『あいつができるんだったら、俺も』と思って競争してくれているのかなと思います」と、若手選手にもチャンスがあることを常に示し続けていることが、チームの活気を生み出している。

J2降格の少し前から30歳前後の選手を多く獲得するケースが続いた仙台だったが、ようやく若手選手をじっくり育てるフェーズに入り、若手に自信を与えながら成長させている森山監督。悲願のJ1復帰に向けて地に足をつけながら、仙台は少しずつ前に歩み始めている。

取材・文●小林健志(フリーライター)

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