東日本大震災から13年、能登半島地震で浮き彫りになった複合災害時の避難の難しさ 原発周辺で道路は寸断、家屋倒壊…

能登半島地震で「能越自動車道」につながる道路が土砂崩れで寸断され、下を通る県道に流れ込んだ。能越自動車道と県道は原発事故時、避難経路となる=1月2日、石川県穴水町

 東日本大震災で教訓となった、大規模災害と原発事故が相次いで発生する複合災害時の住民避難の難しさが、改めて大きな課題となっている。最大震度7を観測した能登半島地震では、北陸電力志賀原発(石川県志賀町)の周辺で家屋倒壊や道路の寸断が多発し、屋内退避を前提とした避難計画の実効性に疑問符が付いた。福井県内の原発はいずれも半島の先端部にあり、幹線道路も充実しているとは言えず、同様の事態に陥る可能性は否定できない。

 ■崩落、亀裂…

 原発事故時の住民避難計画は、東京電力福島第1原発事故を教訓として国が策定した原子力災害対策指針を基に関係自治体が策定している。指針では、原発からおおむね5キロ圏の住民が先に避難し、5~30キロ圏は屋内退避の後、事故の進展や放射線量に応じて30キロ圏外へ逃げる。

 能登半島地震では、石川県が避難ルートに定めた国道や県道計11路線のうち7路線が崩落や亀裂で通行止めとなり、家屋の倒壊も相次いだ。30キロ圏の輪島市や穴水町では最大8集落で約400人が孤立状態となった。新規制基準の適合審査で停止中だった志賀原発で放射能が漏れるような事故は起きなかったものの、重大事故が発生していた場合、屋内退避や30キロ圏外へのスムーズな避難ができたかは疑問が残る。

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 ■自家用車が基本

 「能登のような地震被害に加えて原発事故が福井県で起きれば、家にとどまることも逃げることもできない。避難計画に実効性がないのは議論の余地もない」。反原発を長年訴える石地優さん(71)=福井県若狭町=は語気を強める。

 福井県広域避難計画要綱では、避難は自家用車を基本とし、ない場合などは県や市町が用意するバスや福祉車両で移動する。国道27号、国道8号、北陸自動車道、舞鶴若狭自動車道などが主な避難ルートに設定されている。

 県のまとめによると、美浜、大飯、高浜原発(いずれも関西電力)と敦賀原発(日本原子力発電)の避難対象者(2023年4月1日現在)は、5キロ圏が260~7100人、5~30キロ圏は4万2千~26万3千人。4原発を合わせると、5キロ圏9千人、5~30キロ圏30万5千人となり、道路状況が良くても渋滞の恐れがある。

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