妻の基礎年金額が〈月6.6万円〉から〈月12.2万円〉にアップ…年金受給額を「理論最高値」まで高める方法【メガバンク出身のコンサルタントが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

厚生労働省によると、男性の平均寿命は81.05年、女の平均寿命は87.09年(令和4年簡易生命表より)とされています。こうしたなか、『50代 お金の不安がなくなる副業術』(エムディエヌコーポレーション)著者の大杉潤氏は、妻の基礎年金を「理論最高値」にすることを最優先に考えるべきといいます。では、具体的にどうすればいいのか、詳しくみていきましょう。

老後のいちばんのリスクは、「遺された妻」の収入減少

ぜひお伝えしておきたいことがあります。それは、私のマネープランは年金の繰り下げ受給をして年金額を増やすことですが、最優先に行うべきことは、妻の基礎年金を「理論最高値」にすることです。これだけは、パートナーのいる会社員のみなさんにはぜひ、お勧めしたいと思います。

私自身がもちろん実践していくつもりです。老後のお金は、妻がひとり暮らしになった時に家計の年金収入が大きく減ることがいちばんのリスクだからです。

平均寿命の計算から言っても、多くの家庭では夫が先に逝って妻がおひとりさまになる確率の方が高いと思われます。そうした時に、遺された妻の年金収入は、原則として次の通りになります。

◆妻の基礎年金+遺族厚生年金(夫の厚生年金×3/4)

正確にいうと、遺族厚生年金は、自らの厚生年金を差し引いた分だけ受け取ることになります。また、遺族厚生年金の計算では、繰り下げ受給をした場合の増額された年金額ではなく65歳からもらう年金額をベースに計算することになっています。

妻のために取り組みたい、基礎年金の「最大化」

保険料納付期間を満額に+年金を10年繰り下げで「理論最高値」に

つまり、妻がおひとりさまになった場合に備えて、最優先で行うべきなのは「妻の基礎年金を最大化」すること。具体的には、保険料納付期間を40年(480か月)満額にして、かつ、75歳まで10年繰り下げ受給として1.84倍に増やすこと。

これを私は、妻の基礎年金の「理論最高値」と呼んでいます。

具体的な金額でいえば、2023年現在、65歳から受給する基礎年金の満額は、年間79万5,000円ですが、これを10年間繰り下げて75歳からの受給にすれば、1.84倍に増額されて、年間146万2,800円になります。

月額に換算すれば、月6万6,250円が月12万1,900円に増えるのです。これに遺族年金を加えたものがおひとりさまになった時の妻の年金収入合計になります。

遺族年金は、65歳以降に受給を繰り下げても増やすことはできません。唯一、自分の基礎年金をできる限り増やしておくこと、これが最も大切です。

筆者も、母の年金額減少に“愕然”

母の時代にはなかった「第3号被保険者」制度

もちろん、夫婦関係にはいろいろ個別事情がありますし、妻が年上の夫婦もいるでしょう。健康状態から見て妻が先に亡くなると予想される場合もあるので、もちろん一概には言えません。夫婦仲の問題もあります。

ただ、多くの家庭で、夫に先立たれた妻が少ない年金額に苦しむケースが多いのです。

実はうちの両親もそのケースでした。父は93歳で2023年7月に大往生しましたが、遺された90歳の母の年金は、基礎年金が満額からはほど遠い金額で、年金額の減少に愕然としました。

母は子育てが一段落した段階で正社員として長く働き、そのため厚生年金がある程度の金額になっていたのですが、専業主婦だった子育て期間中に国民年金の納付をしておらず、未納期間があったのです。現在のような専業主婦を「第3号被保険者」として保険料の納付を免除する制度が母の時代にはなかったのです。

「うちの夫婦は関係ないよ」という方もたくさんいることは承知の上で、あえてみなさんにお伝えしたいと思います。

公的年金の受給方法では、何をおいても、妻の基礎年金を480か月納付の満額にした上で、「理論最高値」にするために75歳まで10年間繰り下げ受給とすることをお勧めします。

大杉 潤
経営コンサルタント/ビジネス書作家/研修講師

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