親子を支える「子どもの居場所」 県内に24カ所、10年前の5倍に 背景に「家庭養育優先」 県内市町アンケート 希望って何ですか

 貧困など困難を抱える子どもに安心して過ごせる場を用意し、食事や入浴などの生活支援を行う「子どもの居場所」が県内12市町に少なくとも24カ所あることが11日、県内25市町へのアンケートで分かった。2014年は5カ所で、この10年間で約5倍に増えた。16年の改正児童福祉法で、養育能力が不十分な家庭でも子どもが児童養護施設などでなく家庭で健やかに養育されるよう、自治体による保護者支援を明記した「家庭養育優先原則」が示され、子育て家庭を地域で支える場としてニーズが高まっている。

 アンケートは1月中旬から下旬にかけて実施した。居場所の実施主体がNPOなど民間のケースも含まれるため、各市町が把握している範囲で回答を求めた。

 24カ所の内訳は、日光市が最多の4カ所。次いで佐野、那須塩原の各市が3カ所。宇都宮、足利、小山、栃木、大田原の4市が各2カ所。真岡、鹿沼の2市と芳賀、市貝の2町が各1カ所。

 開設年別では、直近の23年が最も多く7カ所で、次いで22年が4カ所。ここ2年で11カ所設置されており、急速に増えている。居場所の設置費用や初期の運営費を助成する日本財団とB&G財団の「子ども第三の居場所」事業の活用が広がったことが一因。最も古いのは10年で、日光市の1カ所だった。

 設置済みの全12市町が、居場所が子どもの育ちに「効果がある」と答えた。理由は自由記述で、「(子どもが)信頼できる大人と出会い、困りごとについて自ら相談できるようになった」(宇都宮市)、「家庭的な環境で過ごすことにより、生活習慣を身に付けることができている」(小山市)、「保護者の相談先の一つとなり、頼れる存在になっている」(那須塩原市)などが挙がった。

 未設置の13市町には居場所の必要性を尋ね、全ての市町が「必要」と回答。このうち、さくらと那須、益子の3市町は設置予定が「ある」とした。設置予定がない自治体では、運営の担い手がいないことや財源の確保が難しいという意見が多かった。

 県内での居場所提供の先駆者である日光市の認定NPO法人「だいじょうぶ」の畠山由美(はたけやまゆみ)理事長は、現状について「増えてきてはいるが、まだまだ少ない」とみる。子どもが困ったときに自ら逃げ込める避難先を確保する意味でも「中学校区ごとには居場所があってほしい」としている。

【子どもの居場所とは】
 子どもが安心安全に過ごせるスペースを用意した上で、食事の提供や入浴、学習を支援し生活を支える場。基本的な生活習慣を身に付け、自己肯定感を高めたり友人や大人との付き合い方を学んだりして自立する力を養い、貧困や虐待など困難を抱える子どもや家庭を支えている。近年は支援の内容を絞り対象を広げた、子ども食堂など地域交流の場としての居場所も増えている。国は昨年末、初の「こどもの居場所づくりに関する指針」を策定。今後は地方公共団体も居場所づくりを計画的に推進することが求められる。

 

芳賀町の独自調査では

 下野新聞社が県内25市町に実施したアンケートでは、食事や学習などの支援を行う「子どもの居場所」を設置した12市町全てが、子どもの育ちに「効果がある」と回答した。2022年5月に居場所が開設された芳賀町は昨年9月、利用する子どもや保護者などを対象としたアンケートを町独自に実施。回答からは、居場所が子どもの自己肯定感や意欲の向上、保護者の子育て不安の軽減につながっている様子が浮かび上がった。

 同町内の居場所は、未就学児から中学生までの約20人が利用。主に放課後訪れ、遊んだり食事をしたりして過ごしている。

 同町子育て支援課によると、アンケートは居場所を利用する子どもとその保護者、子どもが通う学校や保育園、居場所スタッフにそれぞれ回答を求めた。

 児童生徒を対象としたアンケートには14人が回答した。利用する前と後での変化について確認する項目では、「頑張れば結果につながると思う」との問いに対し、「そう思うようになった」「少し思うようになった」と答えたのが13人に上った。残る1人は「変わらない」だった。

 子どもが居場所に対して感じていることを問う設問でも、おおむね肯定的な回答が得られたという。同課は「子どもたちが居場所で安心して過ごしながら、ほめられたり励まされたりした経験が増えたことが一因」と分析する。

 保護者対象のアンケートには18人が回答。居場所に対して感じる気持ちを選択する設問では「不安が軽減され安心する」を18人全員が選んだ。同課は「仕事で帰りが遅くなってしまうひとり親などは、子どもを夜まで見守ってくれること、距離の近いスタッフに子育ての困りごとを相談できることなどが安心感につながっているのでは」とみる。

 一方、居場所を利用する3人の未就学児が通う保育園などを対象としたアンケートでは、園児が活動に取り組む姿勢については「悪くなった」「変わらない」が占めた。

 同課の担当者は「幼児に対する支援の効果についての評価は難しい」とした上で、「今後も定期的にアンケートを実施したい」とした。

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