終盤の独走劇で新型トヨタ・カムリXSEが初勝利。陣営が312周中298周を制圧/NASCAR第4戦

 予選今季全勝を続けてきた新型フォード・マスタング“ダークホース”の牙城を突き崩し、トヨタの新型カムリXSEレースカーがフェニックス・レースウェイで躍動。3月8〜10日に開催されたNASCARカップシリーズ第4戦『シュライナーズ・チルドレンズ500』は、終盤の独走でクリス・ブッシャー(RFKレーシング/フォード・マスタング)を振り切ったクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)が、チームとトヨタ、そして今季投入のニューモデルに初勝利をもたらした。

 参戦3車種中2車種のボディパネルが刷新された現行Next-Gen規定カップカーは、併せて今季よりショートトラックとロードコース用に新しいルールパッケージを適用。その初戦となったここフェニックスでは、エンジンパネル・ストレーキが消え、リヤでは短縮3インチスポイラーとバーチカルフィンが減らされた簡素版ディフューザーを装着した新たなパッケージに取り組むべく、チームには55分間の追加セッションが与えられた。

 そのフリー走行こそ、前戦まで3戦中2戦でポールウイナーを奪ってきた2022年王者ジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)が最速を記録したものの、その背後ではトップ10中実に6台をカムリXSEが占めるなど、トラフィック内で“包囲網”を築く展開に。そのまま予選の両セッションでトップタイムを叩き出したデニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)が、キャリア41回目のポールポジションと、トヨタにカップ通算150回目のポールをもたらした。

「この場所でもっと良くなるため、本当に努力を重ねている」と続けたハムリン。

「2019年以降、そしてNext-Gen時代に突入してからも、トヨタはこのトラックで思ったほど強くなれていないように思えた。もしチャンピオンシップで勝ち上がりたいのであれば、フェニックスで勝たなくてはならない。僕自身、より良くなるために一生懸命に取り組んでいるし、チーム全体もそうだ。だから全員にとって素晴らしいスタートだし、それについてはかなり満足している」

 レーススタート直後はフロントロウに並んだタイ・ギブス(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)に“露払い”を任せ、トヨタ陣営がトップ集団を形成。6周目には後方でスピンを喫したデレク・クラウス(カウリグ・レーシング/シボレー・カマロ)を起点に、オースティン・シンドリック(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)やオースティン・ディロン(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)らが巻き込まれる多重事故も発生する。

 そんな混乱を尻目に、ステージ1はタイラー・レディック(23XIレーシング/トヨタ・カムリXSE)が、続くステージ2はレディックを従えたベルが勝利を奪う。

新しい空力パッケージを適用したフリー走行では、2022年王者ジョーイ・ロガーノ(チーム・ペンスキー/フォード・マスタング)が最速を記録する
ポールポジションからスタートし、タイラー・レディック(23XIレーシング/トヨタ・カムリXSE)とレースハイタイとなる68周をリードしたデニー・ハムリン(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)
ファイナルステージのリスタート直後にはカイル・ブッシュ(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)がスピンを喫してコーションに

■イエローで戦略が分かれるなかベルが快走

 195周目のファイナルステージ・リスタートに向け、ブレイク中の作業で右リヤタイヤの交換に手間取ったベルの20号車は、前戦で2度も喫した“フラットタイヤ”の影響も考慮し、ラグナットがしっかり締まっているかを確認するため余分な作業時間を費やし、ここで一旦は集団後方に下がる展開に。

 しかし直後にカイル・ブッシュ(リチャード・チルドレス・レーシング/シボレー・カマロ)がスピンを喫してコーション、205周目にはジョン・ハンター・ネメチェク(レガシー・モーター・クラブ/トヨタ・カムリXSE)のプッシュを受けたロガーノが横を向き、ここにコリー・ラジョイ(スパイア・モータースポーツ/シボレー・カマロ)やクラウスが衝突。さらに215周目のターン1〜2ではレディックとのバトル中にハムリンがコントロールを失って脱落するなど、立て続けにアクシデントが巻き起こる。

 このイエローで各陣営の戦略が分かれ、ステイアウトしたマーティン・トゥルーエクスJr.(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)らに対し、ベルはフレッシュタイヤに交換したうえで隊列に合流。最終的に前者の判断はホワイトフラッグまで保たず“アンダーグリーン”の作業を強いられると、残り41周で20号車のベルが満を持してのリードを引き継いでいく。

 ここからクリーンエアで快走を披露したベルは、最終的に背後のブッシャーを5秒以上置き去りにしてチェッカー。トヨタ陣営のドライバーたちがカップレース合計312周中298周でリードラップを刻み、カムリXSEに“トラフィックでの勝負強さ”があることを存分に証明する初優勝を手にした。

「これは本当に気持ちいいよ」と開口一番で喜びを口にしたベル。「今日はすべてアダム(・スティーブンス/クルーチーフ)の功績だ。エンジニアやメカニック以下……誰もが知るように、こんなクルマは滅多に手に入らないものさ。この20号車に乗れたことをとても誇りに思っている」

「今日のカムリXSEは素晴らしかった。僕らにはこのようなレースを何度も実行できる能力があると感じている。これが今年の多くの勝利の最初のものになることを願っているよ」

 併催されたNASCARエクスフィニティ・シリーズ第4戦『コール811ドットコム・エブリィ・ディグ』は、オーバータイムの延長決着となるなか、無線で「狙えたら獲りにいく」と宣言したチャンドラー・スミス(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタGRスープラ)がキャリア通算2勝目をマーク。これでトヨタは同時開催のARCAメナーズ・シリーズを含め、週末3カテゴリー全制覇を達成している。

最後のコーションでステイアウトしたマーティン・トゥルーエクスJr.(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリXSE)は最終的に7位に
「誰もが知るように、こんなクルマは滅多に手に入らないものさ」と勝者ベル
NASCARエクスフィニティ・シリーズ第4戦『コール811ドットコム・エブリィ・ディグ』は、チャンドラー・スミス(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタGRスープラ)がキャリア通算2勝目をマーク

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