ヘッジファンド、株式取引のレバレッジが過去最高付近

Carolina Mandl

[ニューヨーク 12日 ロイター] - ヘッジファンドの株式取引でレバレッジの利用が過去最高付近まで拡大している。レバレッジを活用した戦略は近年急増しており、株価の上昇を受けてリスクの高い取引が増えている。

銀行関係者や大手銀行の顧客向けリポートで明らかになった。

ゴールドマン・サックス、JPモルガン、モルガン・スタンレーがまとめた最新データによると、リターンを上げるために利用されたレバレッジは過去最高かそれに近い水準にある。

コモンファンドのマネジングディレクター、ジョン・デラノ氏は「マクロ戦略のヘッジファンドではレバレッジが間違いなく高い」とし、インフレの抑制進展や人工知能(AI)に対する自信が背景だと述べた。

ゴールドマンによると、ヘッジファンドの株式ポジションのレバレッジは3倍近く。1年前は2.35倍だった。比較可能な過去5年間で最高水準という。

JPモルガンによると、現在のレバレッジは約2.7倍で、2017年以降の最高水準に近い。同年以降の98%の期間を上回っている。

モルガン・スタンレーによると、過去14年間の調査期間中、米国のレバレッジが現在の水準を上回ったのはわずか2%の期間という。

<強気のポジショニング>

レバレッジが増えた背景には、米連邦準備理事会(FRB)が近く利下げに動くと投資家が予想し始めた昨年10月末の株価上昇を受け、ヘッジファンドが強気姿勢を強めたことがある。S&P500は昨年10月末から約24%上昇している。

バークレイズはメモで、さまざまな戦略のヘッジファンドが強気だと指摘。グローバルマクロ戦略のヘッジファンドは昨年の株式のショートポジションを解消してロングに変更。データに基づくコンピューターモデルを使って取引するシステマティック戦略のヘッジファンドも各種株価指数をロングにしている。

カイロス・パートナーズのシニアポートフォリオマネジャー、マリオ・ウナリ氏は「市場は何もかもが順調だと見ている」と指摘。ここ3年のシステマティック戦略の中でレバレッジが最高水準に達していると述べた。

JPモルガンの試算によると、人がデータ分析に基づいて株式のロング・ショートを決める伝統的なヘッジファンドのレバレッジが約2倍であるのに対し、株式クオンツ戦略とマルチストラテジー戦略のヘッジファンドのレバレッジはそれぞれ4.5倍と3.1倍。

14年以降、レバレッジ戦略は投資家の間で人気が高まっており、業界全体で見られる資産の伸びを上回っている。ヘッジファンド調査会社ピボタルパスによると、マルチストラテジーとクオンツのヘッジファンドに占める割合は、14年の24%に対し現在は約32%に増えている。

上昇継続に賭けるために高いレバレッジを利用することは、今のところ功を奏しているようだ。ゴールドマン・サックスによると、システマティック戦略を用いた株式ヘッジファンドは、今年最初の2カ月間で6.42%の利益を上げ、MSCI世界株価指数 をアウトパフォームした。

ヘッジファンドに投資するファンド・オブ・ヘッジファンズのUBSヘッジファンド・ソリューションズのエドアルド・ルリ最高投資責任者(CIO)は、現在のレバレッジ水準はまだ管理可能であり、ボラティリティーも低いことから最大の懸念事項ではないとしつつも、注視は重要だと指摘。レバレッジが流動性リスクと組み合わされば、命取りになりかねないと語った。

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