新聞販売店がウナギ販売⁉「存続しない限りは責務は果たせない」M&Aで現状打破!背景には業界の課題…

近年、新聞の購読者数が減少する中、新聞販売店が生き残りをかけた新たな取り組みを行っています。変化する時代の中で、既存の枠にとらわれないその挑戦を取材しました。

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浜松市中央区にあるウナギやカキなどの加工・販売を行う「マルマ中塩商店」。創業70年の老舗です。この工場でチラシを詰める作業をしているのは村澤和歌子さんです。

<村澤和歌子さん>
Q今は何の作業ですか?
「マルマで配送するウナギのチラシを入れる作業です」

この13時間前となる午前2時過ぎ。村澤さんは新聞販売店のスタッフとして新聞配達の準備をしていました。

<ニュースセンターウエスト浜松 村澤和歌子さん>
Q今から出発ですか?
「はい、今から出発します」

なぜ、新聞配達員の村澤さんが食品の加工会社で働いているのか。そこには、新聞業界を取り巻く環境の変化があります。全国の新聞発行部数の推移です。2013年には、4700万部近くあった新聞の発行部数はこの10年で約2860万部にまで落ち込んでいます。

こうした現状を受け、静岡県西部で新聞販売を行う「ニュースセンターウエスト浜松」が生き残りをかけて挑戦したのが、地元企業とのM&Aです。M&Aとは、企業の合併・買収のことで、「ニュースセンターウエスト浜松」は、2024年1月に「マルマ中塩(なかしお)商店」を買収しました。

<ウエストハママツHD 鈴木順之介代表取締役>
「やっぱり、販売店は販売店で、新聞店である前に、一民間営利企業でありますので、企業として存続しない限りは、新聞販売店としての責務は果たせない」

そのため、村澤さんたち配達員の一部が「マルマ中塩商店」でも働くようになったのです。このM&Aには配達員の雇用を守るねらいもあります。

<ニュースセンターウエスト浜松 村澤和歌子さん>
「やっぱり(購読者数の減少などで)夕刊(配達)が早く終わるので、空き時間に少しで働けたらと思ってやっています」

配達員の「雇用の受け皿」となっている地元企業にも新聞販売店とのM&Aにはメリットがあります。

<マルマ中塩商店 金澤正順取締役工場長>
「現状うちの工場が人員不足になっているので、作業が溜まっている状態というか足りていない状態が続いていまして、そこで新聞配達の方たちが来ていただいて、すごく助かっていますね」

「マルマ中塩商店」側もスタッフが増えることで、新聞販売店がいわば「人材バンク」となっているのです。

<ウエストハママツHD 鈴木順之介代表取締役>
「人口自体も減っていますので、新聞の部数もそうですし、折り込みチラシも悪い。相乗効果で業績としては、どうしても落ちていってしまうというところはあります。ただ、ウエストハママツグループとして、新聞事業が下がっていくイコールウエストハママツグループが下がっていくということではないので、トータルで上を向いていけるようなことはやっていきたいと思っています」

激動の時代を迎える新聞業界で新聞販売店の在り方が変わっています。

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